抄録
閉鎖性水域である溜池は, 集水域からの家庭排水等の流入などにより, 有機性汚濁や富栄養化現象がみられることが多い. 一方, 溜池は地域住民の憩いの場などとして利用されることもあり, 溜池の景観保全や生物生息環境を提供するための合理的な水質改善技術の確立が急務である.
本研究では, 台所排水の水処理において一定の成果が得られている傾斜土槽法を溜池の水質改善技術として適用し, 同法の性能評価を行った. 水質の異なる2ヶ所の溜池を対象に夏季を中心とした数ヶ月の現地実験を行ったところ, CODは原水濃度に対して概ね38%の削減効果, T-Pは原水濃度に対して概ね34%の削減効果を示した. しかし, TINについては明確な削減効果は得られなかった. T-N除去にあっては, 傾斜土槽内での原水の滞留時間の確保と嫌気的状態の確保が必要であると推察された.