抄録
一般に博物館は,基本的に(1)資料の収集と管理,保存,伝達,(2)展示,(3)体系的な学術研究,という三側面を有し,それぞれが有機的な関係を有して知識活動を展開する社会的存在であると認識する.歴史系博物館においては,考古学,歴史学,民俗学,美術史学等の複合専門領域から構成されているのが一般的である.
ここにおける情報処理システムの活用は多方面に考えられ,数々の論が展開され,かつその活動は長年に渡り行われてきた.しかし,全般的に評価されるに至っているとはいいがたい.
コンピュータはデータとその活用環境が存在して,はじめて機能しえ,かつデータの性質とそのデータ操作(情報処理)方法により,そのあり方が決定されくる.このため,データの形成以前の歴史的資料,事象等,利用環境に対する情報学的基礎分析が最も基本である.抽象的論議は空論となりかねず,したがって部分的であれ現実のデータをもとにし,実動のシステムとして形成・動作させなければ,この社会における説得力を有さない可能性がある.これらの認識の上で,歴史系支援情報処理の研究を進めてき,これらの基本的問題,研究のコンセプト,経過概要等について示す.