情報知識学会誌
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シンポジウム「東北大震災と地籍情報」
東北大震災復興に見る地籍情報の重要性
鈴木 修
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2013 年 23 巻 2 号 p. 322-326

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抄録

 不動産は国土の狭い日本において重要な財産であり、その利活用はあらゆる産業の基盤となる。 であるから地籍の管理と活用は国家としても、個人としても重要な課題である。地籍情報とは測地的数値情報と法的権利情報とそれぞれの履歴情報など複合的な情報を含んでいる。過去日本の大学において伝統的な学問は、理科系と文科系に大別されており、地籍に関する研究も本来複合的な要素を持ちながら、これまでは法律的アプローチと測地的アプローチとの二元的な研究をされていた。また阪神淡路大震災や一昨年の東日本大震災を経て、地籍情報は新たな課題も得た。 一方では筆界移動と権利の客体の問題であり、もう一方では防災減災という観点からの問題である。土地家屋調査士は不動産の表示に関する専門家であるが、近年は地籍情報を扱う法律と測量の専門家としての役割がクローズアップされている。日々フィールドに出て調査し、法律問題を考える土地家屋調査士は、この法学と測地学の間をつなぐ役割を担うと考える。今回の東日本大震災では、地殻が最大5.85m 東南方向に、−1.14m 下方に移動した。測地的数値情報としては、基準点の再測をして移動方向と移動量を把握して、その変動を管理できるし、筆界移動についての方針が法務省から出されている。しかし、その土地の上に生じ始めている権利の問題には今だに明確な答えはない。またこれまで地籍情報としては重要視されていなかった歴史的地物や字名などの地名情報や民間伝承も、地籍情報として重要な情報だったことがわかった。過去日本の学会は、地籍情報としてほんの一部を取り扱っていたようだ。今後想定されている新たな災害に対する備えのためにも、新たな国土構築のためにも、地籍研究はもっと広い範囲を取り扱うべきだと考える。そしてこれらの複合的な地籍情報は、情報知識学の分野からも取り扱うべきと考える。

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