抄録
高等教育のマス化が世界的に進行している.高等教育のマス化は,高等教育を受ける人材の裾野を広げ,社会に高度人材を多数輩出する可能性を与える一方で,大学には多様な人材,特に大学準備が十分でない学生の受入れと同時に,学生一人一人に合った,よりきめの細かい学習支援の提供を要求する.他方,高等教育のマス化は,学生一人当たりの資源が縮小することも意味するため,全般に,より少ない資源でよりきめ細かい学習支援を実現することが,要求されていることになる.
オンライン教育やラーニング・アナリティクス等のデジタル技術は,こうした高等教育のマス化とは無関係に,技術の進展とともに高等教育に浸透してきているが,その技術は,広範な学生を対象に,きめ細かい学習支援を的確かつ瞬時,そして安価に提供できる可能性を秘めている.
本稿では,高等教育のマス化が突きつける要求と,それに応えるデジタル技術の可能性について論じる.