本研究では日本の東南アジア研究において,研究者が利用している文献の傾向を明らかにすること,研究成果と図書館コレクションの関係を検証することを目的に,雑誌『東南アジア歴史と文化』掲載論文における,引用文献の状況と,その著者所属機関の図書館における所蔵状況を調査した.引用文献の分析から,6割以上が図書に対するものであること,日本語文献以上に英語文献が引用されていることが示された.また,図書は日本語より英語文献が引用されている一方で,逐次刊行物(雑誌掲載論文等)については日本語文献の引用の方が多かった.所蔵状況の調査からは,日本語文献に限れば7割近くの被引用文献が所蔵されている一方で,英語文献,特に逐次刊行物は所蔵率が約26%にとどまった.特に英語の逐次刊行物について,提供環境が不十分であることが,被引用文献の傾向にも関連している可能性が示唆された.