2025 年 35 巻 2 号 p. 245-254
国立情報学研究所(NII)は,研究データのライフサイクル全体を支える基盤として NII Research Data Cloud(NII RDC)を開発しており,その中核要素として異なる情報システム間の相互運用性を確保する NII RDCアプリケーションプロファイル(AP)を構築してきた.本研究では,この APが分野横断的に適用可能かどうかを検証するため,国内の代表的なメタデータスキーマ(JDCat, BioSample, Darwin Core, MDR Schema)との語彙・構造の整合性を定量的に評価した.その結果,研究成果物に関する記述では一定の整合性が確認されたが,研究活動や文脈情報,アクセス権管理といった動的要素の記述においては,語彙の拡張や再構成が必要であることが明らかになった.さらに,未病 DBの実践事例を通じて,共通語彙と分野固有語彙を層構造で併用する運用モデルの有効性を示した.今後は,公開と共有の境界に対応するアクセス制御語彙の整備や, NII RDC全体での柔軟な語彙運用体制の構築が求められる.