情報知識学会誌
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35 巻, 2 号
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  • 2025 年35 巻2 号 p. 133-136
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー
  • 桑原 誠市, 三原 鉄也, 永森 光晴
    2025 年35 巻2 号 p. 137-144
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー
     マンガは文字と絵画を組み合わせたクロスモーダルな表現であり,学術論文においてもその引用の対象は多様である.またマンガは異版・メディアミックスで共通する物語内容が展開されることが日常的に行われており,その出典の追跡は容易ではない.こうした状況から本研究では,学術論文において引用されているマンガがその引用の記述から適切に追跡できるのか実態調査を行った.理工系分野のコミック工学研究会予稿集の掲載論文 46 件と人文系分野のマンガ学会発行論文誌の掲 載論文44 件を対象に,マンガの表現・内容が引用されている論文中の個別箇所とそこに付与されている出典の記述を収集し,課題を分析した.その結果,マンガという共通する対象についての引用でありながら,引用元のマンガの追跡性が研究分野の引用の慣習の影響を受けており,さらにマンガ表現の構成要素の参照においてばらつきが顕著である状況が明らかになった.
  • 佐々木 雪人, 大庭 一郎, 小野 永貴, 宇陀 則彦
    2025 年35 巻2 号 p. 145-150
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     現代の書籍推薦システムは,主に閲覧履歴や評価に基づいており,文脈の欠如や新規ユーザへの対応の難しさ,多様なニーズへの限界といった課題を抱えている.そこで本研究では,書籍の選択や並び,配置といった本棚の構成にユーザの特性が反映されるという視点に着目し,本棚が個人の関心や価値観,思考の特徴をどのように映し出しているかを明らかにすることを目的とする.そしてその知見をもとに,複数のユーザに共通する特徴を抽出・統合した「本棚モデル」を構築し,推薦手法への応用を目指す.これにより,従来の協調フィルタリングやコンテンツベース推薦とは異なる,文脈的かつ個別性の高い推薦,多様性や意外性に富んだ推薦を可能にすると考える.

  • 井下 敬翔, 尾崎 博信
    2025 年35 巻2 号 p. 151-156
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     働き方改革やリモートワークの普及により,職場でのストレスやバーンアウトが深刻化しており,従業員の感情状態を正確に把握することが,業務効率の向上,安全管理,メンタルヘルス対策に不可欠となっている.本研究では,マルチモーダル感情認識技術の最新動向を,応用事例とともに整理・比較し,各モダリティの利点,実用上の工夫を明らかにした.一方で,学習データ不足やプライバシー保護といった課題も残されており,今後はその解決と職場の健全性向上への貢献が期待される.

  • 佐々木 響希, 中小路 久美代
    2025 年35 巻2 号 p. 157-162
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     Stats.Hakodateプロジェクトでは,「函館市史:統計史料編」に掲載された地域の歴史的統計表を用いて,市民参加型の非専門家によるワークショップをこれまで十数回にわたり実践している.このワークショップでは,我々が選定した統計表を A1サイズで印刷したり壁に投影したりし,その数値や文字を数名の参加者からなるグループで辿りながら,違和感や気づきといったものを付箋やタブレットなどを用いてアノテーションとして付加してもらう.アノテーション作業においては,参加者が自身の知識や経験をもとに統計データの変遷と歴史的背景を照らし合わせ,会話や議論を通じて考えを発展させる様子が観察されている.本論では,参加者が実際に作成したアノテーションをテキストデータ化した上で分類・分析を行う.統計表のどの部分が注目され,どのような文脈でアノテーションが付与されるのかを,アノテーションそのものとその過程を記録した映像データを用いて分析し,統計表とそこに付与されたアノテーションとの関連性を探る.この分析を通して,現状では十分に活用されているとは言い難い地方の歴史的統計資料を,市民の創造的思考を促し,新たな対話と意味づけを促す資源として活用し,地域への愛着や新たな可能性を探る基盤として活用する可能性を論じる.

  • 大森 雄基, 丸小野 壮太
    2025 年35 巻2 号 p. 163-168
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     古代西アジアのアッシリア帝国の重要都市であるアッシュルのエジプト人コミュニティに関する資料には,アッシリア帝国内のエジプト人に関する法的活動が記録され,多数の証人関係の情報が含まれており,古代の都市内コミュニティの貴重な資料である.これまで本アーカイブに関するソーシャルネットワーク分析が行われてきたが,エジプト人の人間関係の可視化やアーカイブの特徴分析といった課題が残っている.しかしながら,従来研究で活用されてきた力学的モデルを利用した可視化は,重要な個人同士の関係の近接性が強く評価されることで周辺の人物の特徴が捉えにくくなる.このため,非中心人物の様相も明らかにする可視化が必要となる.そこで,本研究では, Personalized PageRankを用いて,各ノード(人物・文書)がどの程度各ノードに対して影響しているかを具体的に計算可能であることを示す.また,これにより,アーカイブの性質や,人物のアイデンティティに関する情報を可視化した.

  • 小池 珠恵, 高久 雅生
    2025 年35 巻2 号 p. 169-181
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     本稿では,浮世絵の主題内容を示すメタデータ構造の設計・記述規則の設定・入力方法の提案手法について述べる.浮世絵に興味を持ち始めた初学者は,自身の関心に沿った主題に着目して作品を鑑賞することで,学びを深められる.しかし,浮世絵の主題内容についての網羅的なデータベースや,そのためのデータ構造は発見できていない.そこで,提案手法に基づいて構築した 20項目からなるメタデータ構造とその記述規則を提案する.また,浮世絵コンテンツから主題項目を記述する新たなアプローチの手法について議論する.

  • 吉田 早貴子, 松村 敦
    2025 年35 巻2 号 p. 182-187
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     近年,情報収集手段が多様化する一方で,インターネットによる情報収集に偏る傾向が見られる.この偏りを是正する手段として,図書や雑誌などの資料を提供する図書館の重要性が高まっている.しかし,図書館の利用者は館内での情報探索をうまく行えないことが多い.本研究では,図書館を利用する際の行動や,利用者が直面する課題を明らかにすることを目的とした.実験では,協力者にインターネットの利用を禁止した上で,図書館内で情報探索を行ってもらい,その様子を観察した後,インタビューを実施した.その結果,特定の主題に関する書架を見つける際には書架横の表示が活用されていること,また,目的の図書を探し出すには,館内表示から排架構成を読み取る力が必要であることが明らかとなった.

  • 松下 瑚南, 村井 源
    2025 年35 巻2 号 p. 188-196
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     近年,SNS上での複雑化した対立は争点の不明瞭化により収束が困難となっている.本研究では, 従来の研究では行われてこなかった,人々の持つ価値観に着目することによる争点の明示化を目的 として,「生成AI」の賛否を議題とし,SNS上の発話に対し価値観のアノテーションに基づいて計量的な分析を行った.本論では,KJ方を用いて発話から価値観を23種類に分類し,議題に対する賛否ご との価値観間の共起度と,ネットワーク分析により各賛否における価値観の中心性を比較した.結果, 本議題に対する議論は,利益追求と科学技術の発展を重視する「功利主義」を中心とした肯定的発話群と,「著作権重視」を中心としつつも複数の価値観が混在する否定的発話群により構成されていることが判明した.特に,「功利主義」と「著作権重視」の価値観は同時保持が困難であり,これが主要な争点として機能している可能性が示された.

  • 吉井 史夏, 村井 源
    2025 年35 巻2 号 p. 197-206
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     物語において,内容が同じでも表現が変わると読者に与える影響は大きく変化する.そこで本研究では,読者に与える印象に大きく寄与すると考えられる「描写距離」の概念に着目し,描写距離に影響する文体的特徴を抽出した.分析では,物語文章を「カット」単位で分割し,描写距離と文体的特徴を付与したデータを対象とした.基礎統計やχ二乗検定の結果,語り手と視点を登場人物が担うか否か,そして会話や地の文で描かれる内容が描写距離に影響を与えることが示唆された.また, データに対して重回帰分析を行った結果得られた回帰式を用いて描写距離の計算式を作成し,実際に描写距離を算出したところ,各カットに含まれる文体的特徴を反映した描写距離が出力されることが確認された.さらに,データに対して共起分析を行ったところ,描写距離が近いほど地の文や会話文において様々な要素が共起しやすいことや,逆に描写距離に依存しない文体的特徴が存在することが示唆された.

  • 入舩 真誠, 村井 源
    2025 年35 巻2 号 p. 207-216
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     複数の物語を組み合わせた物語の複合的構造について,従来様々な研究が行われている.しかし,複数の物語の接続の関係については十分に明らかになったとは言えない.また,長編の物語について分析した研究は少ない.一般に物語はすべての主人公の目的が達成されたとき,主人公の行動するべき理由が失われ完結する.そのため,物語を長編化するにあたっては,主人公の目的が達成された後に読者が違和感を持たないような主人公の新たな目的を発生させ提示する必要がある.本研究では,主人公の目的の変化に着目し,どのように複数の物語が繋がれているかを実証的に分析する.対象となる 3作品から合計 4620個の目的を用いて,目的の連続構造,入れ子構造,並列構造といった物語構造の記述・抽出しカイ二乗検定や Duce係数を用いて分析した.その結果 ,入れ子関係について 5種類パターンが存在することなどが明らかになった.

  • 野口 博司
    2025 年35 巻2 号 p. 217-226
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     立正佼成会デジタルアーカイブ(以下,佼成会 DA)は,「長期的に持続可能な文化的価値の創出の基盤」を目指し, 2023年 5月に公開された.( https://archive.kosei-kai.or.jp/)佼成会 DAは,参画組織の業務機能や収集・管理資料が多岐にわたることから,博物館・図書館・文書館( Museum, Library, Archives)に加え,研究機関( Research Institute)や産業( Industry)を加えた組織内 MLARI連携を前提としたシステムの構築が求められた.その要件に対応するため,柔軟なカスタマイズが可能なオープンソース Drupalを導入し,アーキテクチャの透明性を確保し,開発・運用コストを抑えながらシステムの構築を進めている. 2038年の教団 100年史編纂に向け,各時代に応じた最適なシステムへの段階的発展を視野に入れている.本稿では Drupalによる, MLARI連携型のアーカイブズ編成記述に関する開発事例を報告する.

  • 片倉 峻平, 塚越 柚季, 半澤 智絵, 柳原 幸子
    2025 年35 巻2 号 p. 227-232
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     東北大学は,学内組織の所蔵資料データを一箇所に集約し,横断的かつ網羅的に一括検索ができるようなプラットフォームを目指した「東北大学総合知デジタルアーカイブ( ToUDA)」を, 2024年に公開した.現在の参加組織は附属図書館・史料館であるが,今後は博物館などにも範囲を広げる予定である.組織の多様性ゆえに,収録資料はその膨大な量に加え,言語,書写形態(手書き・活字など),時代などにおいて多様な特徴を持つ.これらの資料の特徴を適切に分類し,また記述内容をテキストデータ化する試みは不可欠であり,そのために AI技術の活用が期待されている.
     本稿では ToUDAの概要および収録資料の現状を紹介するとともに,大量かつ多様な資料の自動分類や OCR(光学文字認識)処理によるテキストデータ化を,どのように実現することが望ましいのか,またそのために必要なアプローチについて議論する.

  • 小川 歩美, 堀井 美里, 本庄 有紀, 堀井 洋
    2025 年35 巻2 号 p. 233-238
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     筆者らは,地域資料に関する情報を記録した地域資料データの中長期的な収集・保存・公開を目指し,2023年5月から地域横断型データ共有基盤「AMANE Archives」の構築および運用に取り組んできた.現在,AMANE Archivesでは,画像・メタデータの蓄積・公開に加えて,3Dデータの公開・メタバースとの連携,市民参加型クラウドワークへのデータ提供など,さまざまな利活用の実現を目指している.その一方で,大量かつ複雑な資料データを効率的に生成するためのデータ生成ワークフローの確立や,一般市民向けサービスの公開に伴う急激なデータアクセス量の増加への対応,さらに,3Dデータをメタバース上において提示・公開するためのデータ連携の実現など,新たに取り組むべき課題も複数存在する.本報告では,AMANE Archivesの活用事例を紹介するとともに,今後の課題解決に向けた展望を述べる.

  • 椋本 輔, 上松 大輝, 山中 司
    2025 年35 巻2 号 p. 239-244
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     本研究では,デジタルアーカイブをめぐる情報の蓄積・体系化・活用の問題を一体で,総合的なコミュニケーションプロセスとして捉えるための理論的基礎を検討する.特に「戦争関連資料」といった対象では顕著に,個々の記憶に根ざした主観的な意味付けと,共有の前提となっている社会的な文脈による意味付けがともに有って,そもそものアーカイブの対象が生み出される.そのためには,情報の蓄積・体系化・活用を再帰的に,様々な主体によるコミュニケーションプロセスとして捉える必要が有る.その理論的基礎として,本研究では,ネオ・サイバネティクス(セカンドオーダー・サイバネティクス)の一環として,構成主義的な情報概念を社会的な意味共有のレベルまで総合的に理論化した基礎情報学を援用した提案を行う.また理論的基礎付けを踏まえて,「様々な主体が見出している主観的な意味」についてのコミュニケーションを,デジタルアーカイブによって媒介していく可能性を検討する.

  • 朝岡 誠, 南山 泰之, 林 正治, 平木 俊幸, 込山 悠介, 下山 武司, 横山 重俊, 藤原 一毅, 武田 英明, 山地 一禎
    2025 年35 巻2 号 p. 245-254
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     国立情報学研究所(NII)は,研究データのライフサイクル全体を支える基盤として NII Research Data Cloud(NII RDC)を開発しており,その中核要素として異なる情報システム間の相互運用性を確保する NII RDCアプリケーションプロファイル(AP)を構築してきた.本研究では,この APが分野横断的に適用可能かどうかを検証するため,国内の代表的なメタデータスキーマ(JDCat, BioSample, Darwin Core, MDR Schema)との語彙・構造の整合性を定量的に評価した.その結果,研究成果物に関する記述では一定の整合性が確認されたが,研究活動や文脈情報,アクセス権管理といった動的要素の記述においては,語彙の拡張や再構成が必要であることが明らかになった.さらに,未病 DBの実践事例を通じて,共通語彙と分野固有語彙を層構造で併用する運用モデルの有効性を示した.今後は,公開と共有の境界に対応するアクセス制御語彙の整備や, NII RDC全体での柔軟な語彙運用体制の構築が求められる.

  • 西澤 正己, 孫 媛
    2025 年35 巻2 号 p. 255-261
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

    我々はこれまでプレスリリースのソースとして,新聞社が作成するデータベースを利用してきた.しかし,近年,大学から出されるプレスリリースが大きく増加し,一部のプレスリリースのみの採録となっている.日本では科学技術振興機構がプレススリリースのポータルサイト (Science Portal)を立ち上げ,登録された大学からのプレスリリースがシステマティックに発信されるようになっている.基本的に各大学のプレスリリースページへのリンクであるが,登録大学からの発信は網羅的に見ることができる.大学から発信される研究成果に対するプレスリリースには原論文情報が記載されているものがほとんどであり,近年は主要 5大学において DOI情報が 70-100%程度記載されていることがわかった.しかし,2020年以前は記載率が低く,タイトル及び論文誌情報から原論文を特定する必要がある.本報告では,Science Portalに登録されている一部の大学のプレスリリースをからDOI,あるいは論文タイトルを抽出し,SCOPUSのメタデータと照合した上で原論文DOIを特定する手法と結果を報告する.

  • 高久 雅生, 江草 由佳, 榎本 聡, 大井 将生, 有山 裕美子, 阿児 雄之
    2025 年35 巻2 号 p. 262-277
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     図書館・博物館・文書館等によるデジタルアーカイブの公開が進む一方,教育向けのメタデータ不足や情報量の膨大さが課題となり,教育現場での活用が進みにくい状況にある.筆者らは,デジタルアーカイブと教育内容を結びつける Linked Open Data (LOD)基盤として「教科書 LOD」「単元 LOD」「学習指導要領 LOD」を開発し, URI識別子を用いた横断的な連携の可能性を模索してきた.本稿では,構築した LOD基盤の構成, LODリソースと教育内容の関連付け,デジタルアーカイブコンテンツとの連携,教育活用の可能性を示し,手法の有効性を議論する.

  • 上松 大輝, 武田 英明, 山田 奨治, 相田 満
    2025 年35 巻2 号 p. 278-285
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     『古事類苑』とは,明治政府の一大プロジェクトとして明治12年(1879)に編纂がはじまり,明治29年(1896)から大正3年(1914)にかけて出版された,本文1,000巻,和装本で350冊,洋装本で51冊,総ページ数は67,206ページ,見出し数は40,354項目におよぶ大百科事典である.部や門で階層的に整理された見出しには,前近代の文化概念について明治以前のあらゆる文献からの引用が掲載されており,日本文化を理解するうえで有用な事典である.これまでに,天部,歳時部,地部,帝王部といった13の部の知識グラフを構築し,古事類苑LODとして公開している.本研究では,古事類苑LODの詳細を述べたあと,「地部」に掲載されている地名や地形,地理に関する見出し語について,古事類苑内での記述および引用された文献との関係性の発見を目指す.

  • 長塚 隆
    2025 年35 巻2 号 p. 286-295
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

    地域史の資料に関しても目録や資料本体のデジタル化・ネットでの公開が進展しており,資料の探索において各種のデータベース,ポータルサイト,検索エンジンなどの活用が進められている.そのような中で,新たに出現した生成 AIプラットフォームは,情報探索において,どのような新たな役割を担うことになるのか.あるいは,どのようなことを新たに可能としうるのか.地域史資料である自治体発行の広報誌について,現状での代表的な生成 AIプラットフォームである Bing Copilot, ChatGPT, Google Geminiを用い,生成 AIプラットフォームの情報探索における機能の範囲と現状における限界を提示し,それぞれの生成 AIプラットフォーム間における共通点と相違点を明らかにした.

  • 林 武文, Alaa Nassar, 大城 道則
    2025 年35 巻2 号 p. 296-303
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     エジプトのメイドゥム遺跡の 3Dモデル構築と情報発信を目的に行った,ドローンを用いた写真測量とデジタルコンテンツ開発について述べる.メイドゥム遺跡は約 4500年前に築造され,世界的に有名なスネフェル王の「崩れピラミッド」を含む多数のマスタバ墓が存在する.現在も完全な調査が行われておらず,新技術を用いた遺跡全体の計測は,さらなる研究の発展につながると期待される.著者らは 2019年より遺跡の 3D計測に携わり,ピラミッドの 3Dモデルを構築した. 2022年 8月には 3回目の計測を実施し,遺跡全域の 3Dモデルを取得した.本報告では,ドローンを用いた写真測量と 3Dデータ構築のプロセスを詳述するとともに,遺跡の 3Dデジタルアーカイブ化や,歴史教育・観光など地域振興に資するデジタルコンテンツの構築について考察する.

  • 叢 艶, 高久 雅生, 南山 泰之, 青木 学聡
    2025 年35 巻2 号 p. 304-314
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     近年,研究データを広くウェブで公開し,再利用を促すオープンサイエンスの取り組みが広まっている.研究データをウェブで公開する際には,対象領域に合わせたメタデータスキーマが選択され,リポジトリを通じてデータの流通が実現されている. Linked Open Data (LOD)データセットにおいて, VoIDや DCATといったメタデータスキーマが広く採用されている.しかしながら,異なる機関などでの研究データをメタデータスキーマで管理しており,横断的な検索・再利用が困難となっている.一方,異なるメタデータスキーマの間では記述名の重複や意味の揺らぎがあり,このことも大きな課題である.加えて,メタデータ記載内容に関するガイドラインが不明確であることや,提示されているサンプルが少ないことがしばしば見られ,問題が複雑化する要因となっている.結果として,メタデータ作成者は曖昧な情報元にメタデータ記述を実施せざるを得ず,メタデータ間の互換性低下に繋がっている.このような背景を踏まえ,本研究では, VoIDや DCATといった LODデータセット用メタデータと研究データに関する国際的なメタデータ基準である DataCiteの間のマッピングを行い,メタデータスキーマ間の互換性を確保する方法について議論する.また,それに基づき,メタデータスキーマの自動変換を試みる.これにより,異なるメタデータスキーマ間での解釈の同定と関係付けをスムーズにし,データセットを対象とするメタデータの相互運用性が向上することが期待される.

  • 南山 泰之, 安田 裕之, 池谷 瑠絵, 等々力 賢, 藤居 文行, 野口 誉之, 木本 早苗, 藤原 寛太郎, 朝岡 誠, 林 正治, 平 ...
    2025 年35 巻2 号 p. 315-326
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

    ムーンショット型研究開発制度は,日本発の破壊的イノベーションの創出を目指し,より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を行うコンセプトで創設された国の大型研究プログラムである.同プログラムに含まれる研究開発のうち,目標 2では超早期疾患予測・予防を実現するため,観察・操作・計測・解析・データベース化等様々な研究開発を推進している.本プロジェクトの一つである包括的未病データベース構築は,数理的連携研究とバイオデータ共有を横断的に実現するため, (a) 多様な未病データの保存・管理・共有, (b) 数理解析のプログラミングや計算実行, (c)未病データの公開,の 3つを具体的な課題として設定し開発が進められている.データベース構築に当たっては,未病に関するバイオデータ共有には研究ニーズに応じた共有範囲の設定要求と,インフォームドコンセント,医療データの研究利用に伴う契約,条約,法令,各種ポリシー等による種々の制約とが存在しており,両者の要求を同時に実現する最適化されたデータ管理体制が求められる.そこで本研究では,目標 2に参加している研究者へのインタビュー調査を通じて,未病に関するバイオデータ共有までの標準的なビジネスフローを考察する.さらに, NII研究データ基盤( NII RDC)を用いて,開発したビジネスフローを評価する.

  • 尾﨑 博信, 井下 敬翔
    2025 年35 巻2 号 p. 327-332
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     訪日外客数が過去最多となる一方,特定地域に観光客が集中するオーバーツーリズムの再燃が指摘されている.需要の高い観光拠点の訪問動機や評価事項を把握し,同様の傾向かつ混雑度が低い候補拠点群を抽出することは,混雑の影響を軽減する上で有用と考えられる.本研究では京都,滋賀,奈良の観光拠点毎の平均口コミベクトルを算出し,類似度が高い拠点群及び共通項を明らかにした.類似度の視点の有効性が部分的に示された一方で,混雑が類似度に反映される懸念も示された.後者の影響を除外し前者の恩恵を享受する拠点抽出の設計が求められる.

  • 本田 正美
    2025 年35 巻2 号 p. 333-337
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/14
    ジャーナル フリー

     2014 年から千葉市において地域課題の解決のために利用するアプリケーションである「ちばレ ポ」が運用されている. 現在では,「ちばレポ」をベースに開発したシステム「MyCityReport」も 運用されており, 同システムは全国の自治体で利用が広がっている.
     行政が提供するアプリケーションの登録利用者に関するデータが公開されることは必ずしも多 くないが,「ちばレポ」については, 登録利用者や登録利用者からのレポートに関するデータがオー プンデータとして公開されている.そこで, 本研究では, 運用開始から10 年が経過した「ちばレポ」 の登録利用者に焦点を当てる.
     登録利用者にかかわり,2016 年時点で本田 (2016)「オープンデータ化された 「ちばレポ」 の登 録者情報を基にした行政アプリケーションの浸透過程の推定」において, 行政アプリケーションの 浸透過程の推定を行った. 対して本研究では, 行政アプリケーションの定着過程を推定することと する.

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