2026 年 36 巻 2 号 p. 118-123
本研究の目的は,読書前に小説の感性情報を把握する支援手法の提案と評価である.提案手法では,プルチックの 8感情に基づき,小説と音楽それぞれに 8次元の感情ベクトルを付与し,コサイン類似度から各小説に感情的に類似した音楽を選定する仕組みを構築した.小説については 56冊のレビューを BERTで感情分析し,音楽についてはユーザ調査により 80曲のピアノ楽曲を数値化して,それぞれ感情ベクトルを生成した. 20名を対象とした評価実験では,未読の小説に対して表紙やあらすじ,レビュー等を提示し,音楽提示の有無による 2条件で読書時の感情を予測させた.その結果,参加者の回答から算出した感情ベクトルと提案手法の小説の感情ベクトルとの平均類似度は,音楽なしの条件と比べて音楽ありの条件の方が統計的に有意に高くなった.以上より,感情類似度に基づく音楽提示が小説の感性情報を把握する支援として有効であることが示された.