2026 年 9 巻 2 号 p. 20-30
目的
経済連携協定(Economic Partnership Agreement、以下、EPA と略す)により来日した外国人看護師は、国家試験合格後十分に教育が保障されていないことが課題となっている。そこで、対話による学びの機会の必要性を踏まえ、コミュニケーション実習を考案した。
本稿の目的は受入れ医療機関におけるコミュニケーション実習の試みを報告し、改善点を明らかにすることである。
方法
EPA看護師(ベトナム出身7名)、教育担当看護師(1名)、EPA担当職員(1名)の計9名を対象とした。コミュニケーション実習は2日間で実施し、第1回では伝達活動を行い、第2回では職場体験の共有を行った。コミュニケーション実習のねらいは、参加者が課題解決につながる行動目標を立てることである。記録用紙および質問用紙に記述された内容をテキストデータ化し、分析を行った。
結果
第1回の伝達活動でEPA看護師は時間軸や転倒場面などに注目して、正確に伝えようとしていた。第2回では、EPA看護師と教育担当看護師・EPA担当職員がともに職場のコミュニケーション体験や困難を話し合うことにより、適応課題に気づき、行動目標を考えることができた。
考察
伝達活動における内容の適切性においては、情報量の改善が必要であること、また伝達内容の難易度については、日本語能力試験の基準のみに依拠するのではなく、就労現場における実際のコミュニケーション状況を考慮する必要性が示された。先行研究により転倒場面の伝達に相当するインシデント報告を扱う意義も確認された。
伝達条件の難易度に関しては、質問の回数を段階的に増やし、自由度を上げることにより、聞き返しへの意識づけに効果が見られた。また、非言語コミュニケーションの条件を新たに加える改善点が明らかになった。
さらに、キャリア形成の観点からEPA看護師の教育研修においては、継続的かつ長期的な育成計画の必要性が示唆された。