抄録
本研究 では以下の 3 つの 研究課題 の解明を目的としている。すなわち ①誰が ICT 活用不安を抱いているのか ② その不安は心理的健康にダメージを及ぼすものなの か ③ ICT 活用不安を心理的健康ダメージに結びつけてしまう条件は何かである。 2020 年 11 月にWEB 調査を実施した。 分析対象データはA 県内の小中学校に勤務する教諭 3277 人である。 教員の ICT 不安に対しては多様な変数が影響を及ぼしていたが,特に性別・年齢の属性要因の影響が強いことが分かった。 同僚信頼と職能成長による抑制効果も確認された。 また, 教員が 強度 ICT不安に陥っている場合,抑鬱傾向ハイリスクとなる確率が約 2 倍に上昇することが分かった。強度 ICT不安は放置できる問題ではないと言える。さらに,強度 ICT 不安と抑鬱傾向の関係における調整効果要因を検証したところ,ここでも性別・年齢の影響が認められた。 強度 ICT 不安を抱きやすいのは 50 歳代の女性教諭であるが, その不安が抑鬱ハイリスクに結びつきやすいのは20歳代男性と 50 歳代男性であった。