学校改善研究紀要
Online ISSN : 2436-5009
4 巻
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  • 露口 健司
    2022 年 4 巻 p. 1-16
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究 では以下の 3 つの 研究課題 の解明を目的としている。すなわち ①誰が ICT 活用不安を抱いているのか ② その不安は心理的健康にダメージを及ぼすものなの か ③ ICT 活用不安を心理的健康ダメージに結びつけてしまう条件は何かである。 2020 年 11 月にWEB 調査を実施した。 分析対象データはA 県内の小中学校に勤務する教諭 3277 人である。 教員の ICT 不安に対しては多様な変数が影響を及ぼしていたが,特に性別・年齢の属性要因の影響が強いことが分かった。 同僚信頼と職能成長による抑制効果も確認された。 また, 教員が 強度 ICT不安に陥っている場合,抑鬱傾向ハイリスクとなる確率が約 2 倍に上昇することが分かった。強度 ICT不安は放置できる問題ではないと言える。さらに,強度 ICT 不安と抑鬱傾向の関係における調整効果要因を検証したところ,ここでも性別・年齢の影響が認められた。 強度 ICT 不安を抱きやすいのは 50 歳代の女性教諭であるが, その不安が抑鬱ハイリスクに結びつきやすいのは20歳代男性と 50 歳代男性であった。
  • 高木 亮, 長谷 守紘, 高田 純, 神林 寿幸, 清水 安夫, 藤原 忠雄
    2022 年 4 巻 p. 17-25
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    3年に一度行われる『学校教員統計調査』では精神疾患を含めた理由別離職者数が公開されている。精神疾患による病気休職に関する公刊統計の分析は多数存在するが,この教員の離職に関する詳しい検討はなされていない。そこで,基礎的検討として『公立学校教職員の人事行政状況調査』に基づく精神疾患による休職と離職の比率の対比を行う。令和元年度『学校教員統計調査』における『教員異動調査』で公表されている【離職の理由別年齢別離職教員数】を分子に,『学校調査』における【年齢別職名別本務職員数】を分母に参照する【離職出現率】を作成した。これらを集計し検討した。令和元年度『公立学校教職員の人事行政状況調査』の【病気休職者の学校種別・性別・職種別・年代別状況(教育職員)】で示される精神疾患休職者に関する表と同様の属性比較を行う精神疾患病気離職者に関する表を作成した。その上で精神疾患による病気休職出現率は年代別に差はないが,離職出現率は20代前半が大きいことが示された。このような背景と課題を考察した。
  • フォーカス・グループ・インタビューの分析を通して
    宮崎 麻世
    2022 年 4 巻 p. 27-41
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、先行研究の蓄積が少ない宿題について概観した上で、小学校における教師と保護者の宿題に対する意識を調査分析し、双方の捉え方を検討することを通して、新たな側面から宿題研究の視座をつくることを試みるものである。そのために、宿題についての先行研究を概観した上で、フォーカス・グループ・インタビューの手法を用いて、教師5名と保護者5名の宿題に対する意識の調査分析を行った。その際、3つの資料から宿題に内包される8つの概念を抽出し、調査分析の視点とした。分析の結果、教師と保護者ともに宿題についての捉え方は個々によって異なっており、その価値観も揺らぎながら存在していることや、宿題は目的が不明確であること、教師と保護者の学校教育と家庭教育の捉え方にずれが生じていること、宿題は双方に負担感を含んでいることを明らかにした。
  • A自治体公立小学校副校長の意識に焦点をあてて
    村上 正昭
    2022 年 4 巻 p. 42-53
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,学校改善の内容に対して,規定要因としての助長要因と阻害要因が及ぼす影響を解明することである。本研究では,先行研究の知見を基に学校改善の内容,助長要因,阻害要因を測定するための尺度,及び,学校改善の規定要因モデルを作成し,公立小学校に勤務する副校長を対象とした質問紙調査を行った。得られたデータに対して,探索的因子分析を行い,各尺度における構成概念を明らかにし,共分散構造分析により,学校改善の規定要因モデルを検証した。その結果,学校改善の内容に対して,助長要因は正の規定を示しているが,阻害要因は負の規定の他に正の規定,または,正負の規定と複雑な作用を有するという萌芽的研究としての知見が得られた。阻害要因「学校外からの支援不足」「教員の意欲と力量の不足」「合意優先の学校組織文化」による学校改善の内容に対する正の規定は,阻害要因の克服に取り組み,経営行動として改善を図る学校組織の様相が表出した結果と推察される。
  • 「実行可能な学校経営改善プラン」の作成演習を通して
    芥川 祐征
    2022 年 4 巻 p. 54-61
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の目的は、学校管理職の登用後研修として実施されている新任教頭研修において、職能開発(professional development)型の研修を試行した場合、どのような短期的成果と課題が得られるのかを明らかにし、有効性・継続性のある行政研修の企画立案のための手掛かりを提示することである。すなわち、各学校において組織的解決が求められている経営課題「危機管理」「働き方改革」「若手育成」を題材として「実行可能な学校経営改善プラン」の作成演習を行った。具体的には、同研修において、各班の受講者が勤務校の問題点を析出し、各学校における所与の経営条件や環境を踏まえ、協議を通して実行可能な改善の方策を探った。研修後の追跡調査の結果、受講者は俯瞰的な視点から学校の経営課題を構造的にとらえ、演習の成果をもとに改善を図ったことが分かった。今後は「実行可能な学校経営改善プラン」の模範例を作成し、教頭としての勤務経験をもつ指導主事を進行役として配置することで、研修の継続性を確保することが期待される。
  • Edu21st尺度による自己効力感の変容に着目して
    柏木 賀津子, 宍戸 隆之, 矢田 匠
    2022 年 4 巻 p. 62-82
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,大学教員養成におけるグローバル教員研修が,大学院生(現職教員・大学生)の「教員21世紀型スキル」に関する自己効力感にどのような変容をもたらすかを明らかにすることである。研修は,1. 対話型ボトムアップ研修,2.フィンランドの教育改革研修,及び,3.教科連携のCLIL・STEAMに拠る授業訪問を特徴とする。次世代の児童・生徒が,学びを実社会へ転移するような教育を実現する教員の21世紀型スキルとは何か,国際間比較をとおした俯瞰的な研修を目指す。研究方法は,『Edu 21st:教員21世紀型スキルの自己効力感尺度』の47質問項目をもちいた事前と事後の変容,およびポートフォリオ記述分析である。その結果,Edu21st(3因子構造)で差が認められ,「分析的デザイン思考能力」で最も変化が大きいことが明らかになり,異分野連携の協働中に起こる異質な考えに対する葛藤への価値付けが見られた。
  • 学校改善と児童の学力向上をめざして
    木村 憲太郎
    2022 年 4 巻 p. 83-91
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    学校現場では、毎年4月上旬に新学年に関する進級引き継ぎ会が行われる。引き継ぎされる枠組みは、主に児童の身体・アレルギーに関すること、特別な支援を必要とする児童名とその内容、集金の未納、家庭環境、学力低位層に位置する児童名等である。時間的制限があるためか、教科に関することは引き継ぎされにくい現状がある。しかし、学習の系統性が強い算数科については、引き継ぎされるべきであると考えた。そこで、事例校において実施した算数科の学年末テストの結果を分析し、進級引き継ぎにおける算数科資料を作成した。その資料には、知識及び技能と思考力・判断力・表現力等を分けて、①支援を要する児童、②児童が苦手とする単元・問題の傾向、③学力格差のイメージを記載し、全体的に関わることとして、旧担任としての取組んできた実践と今後の実践を記載した。
  • 熊井 崇
    2022 年 4 巻 p. 89-101
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,近年の学校現場における教員同士のつながり醸成の方法を探り実践することで,児童の資質・能力の向上に結び付けることを目的とする。調査対象は2020年度A小学校教職員15名と3年生以上の児童128名で,調査方法は観察,インタビュー,質問紙である。「支え合い高め合う組織特性」(露口2008)の視点に基づいて,調査結果の分析から課題をまとめると「目標・課題の共有」,「困難・感情の共有」,「教員同士のつながりを活かした授業力の向上」となった。これらの課題を解決するために,サーベイ・フィードバック活用等の効果的な校内研修をデザインしていくことが必要だと考えた。A小学校に適したつながり醸成の取組である,コミュニケーションの場を確保するためのワークショップ型校内研修の実施や,一人年2回以上の研究授業(特にICT活用)の設定等を通して,同僚性や授業改善に向けた実践的指導力の向上を図る。
  • 後藤 宏樹
    2022 年 4 巻 p. 102-111
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,3年連続で生徒数の減少に陥った公立普通科A高校の現状を分析するため,様々なデータを基に原因の解明に迫り,明るい未来につながる生存プランの構築を目指すことを目的とする。卒業者数,国公立大学の進学率,入学者割合などを視覚化し,また,地元5校の中学校へのアンケート調査から中学校の現状と高校に求めている条件などの共通点を見付け出すこと,さらに,近隣の私立高校の減少率(転出者率)との比較や全校生徒を対象としたアンケート結果の分析を行うことで,今置かれている状況を教職員全体で直視する。その中で,部活動の存在価値を始めとした生徒が求める要素をデータから読み取り,チーム魅力化のために組織として対応するべき方向性を探っていく。来年度に向けた取組として,管理職の協力を得ることで新しいチーム編成案を掲げ,総合科目選択制度や総合的な探究(学習)の時間などの有効活用に取り組み,校内外に魅力を共有するプランを作成する。
  • 公立中学校における ICTを活用した取組例
    相良 誠司
    2022 年 4 巻 p. 112-121
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    新型コロナウイルス感染症拡大により,2020年3月から,全国の学校が一斉休校となった。ICTの整備が不十分な公立学校の多くは,子どもの学びを止めないための手立てを講じようにも講じることができない状況が続いた。また,学校再開後も,感染症拡大防止のさまざまな対策を講じなくてはならないことから,行事等の実施に支障が生じた。コロナ禍の中,福岡市立青葉中学校は,いち早くICT環境を整備し活用して,授業及び行事等の改善を図ってきた。まず,授業では,校内適応指導教室に通う不登校傾向の生徒へオンライン授業を実施した。また,行事では,ICTを活用して「高等学校遠隔説明会」「生徒会立会演説会・生徒会役員任命式・生徒総会」「ダンスコンテスト・ミュージカルコンサート(合唱)」等を改善した。さらには,PTA活動においても,ICTを活用して講演会を開催した。本稿では,コロナ禍の中で,公立中学校である福岡市立青葉中学校が,試行錯誤しながらも,ICTを活用して授業及び行事等の改善を図った取組例を報告する。
  • 吉弘 祐治
    2022 年 4 巻 p. 122-133
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,どうすれば若手教員が自信をもち,生き生きと教育活動にあたれるのかを解明することである。そのために,環境づくりの観点から,3年目教員を対象に毎月アンケート調査(全29回)を実施し,職務状況を明らかにすると共に,今年度の「職務遂行上の不安感」の特徴を捉えた。また,人づくりの観点から,若手教員でチームを組みOJTを行った。調査結果から,コロナ禍が若手教員を疲弊させ,キャリア発達を阻害していることが明らかとなった。特にウェルビーイングが顕著であった。教職適応に向けてキャリア発達を促進するためには,児童・生徒・保護者・同僚・管理職の教師に関わる信頼関係を構築することが重要であることが示唆された。信頼関係を構築するためには,職能成長も重要である。人づくりの観点からは,ニーズに応じたOJT実践を意図的・組織的に行うことで,若手教員の職能成長につなげることができた。
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