抄録
本研究の目的は、大学進学時における地域移動の規定要因と地域移動の学生生活への影響に関する基礎的分析を行うことである。具体的には、①本人の属性としてのいわゆる性格や特性の地域移動への影響、②大学進学者とされる相対的に有利な立場にある生徒の有する社会関係資本の地域移動への影響、③大学生の社会関係資本の保持状況、④地域移動の学生生活への影響について質問紙調査より検討する。その結果、相対的に有利な立場にある生徒に対しても社会関係資本は居住空間につなぎとめる役割を果たすこと、地方圏居住の勉学タイプの生徒が最も移動しやすい傾向にあること、大学生の社会関係資本は親と友だち関係として蓄積されていること、地域移動は学生生活の充実度には一定の影響を与えるものの、資質・能力の伸長には影響を与えないことが明らかにされた。