抄録
複雑で変化の速い世界に対応するため,多面的に考え柔軟な思考力を持った人材の育成が急務とされる。高等学校においても教科等横断的な学習が推奨され,教材開発や教科連携についての模索が続いている。今回開発した教科等横断科目では,教科等横断のアプロ―チの軸として,文理を融合した知識体系を成す「ビッグヒストリー」の活用を試みた。これは,物質の成り立ちから地球システム,人類の歴史の光と影,グローバルイシューを踏まえた未来の展望までを時系列に理解することで,持続可能な社会の構築を目指す,正解のない問いを模索していくものである。この授業を通しての生徒の主な変容は,考える力と伝える力に対する自信の高まりであり,市民的資質育成という面においても成長が期待できるものであった。より探究的で概念的理解を促すための教育方法の提示が今後の課題である。