Reproductive Immunology and Biology
Online ISSN : 1881-7211
Print ISSN : 1881-607X
ISSN-L : 1881-607X
学会賞受賞論文
胎児発育および適切な胎盤の酸素化における母体赤血球のENT1による酸素供給の重要性
Sayama Seisuke Song AnrenBrown Benjamin C.Couturier JacobIriyama TakayukiSibai BahaKellems Rodney E.D’Alessandro AngeloXia Yang
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2020 年 35 巻 p. 24-31

詳細
抄録

【目的】低酸素と胎盤形成不全の関連は知られているが、低酸素において中心的な役割を担う赤血球の機能低下と胎盤形成不全との関連に関する知見は極めて少ない。本研究では、赤血球の膜上に存在する核酸トランスポーターであるEquilibrative nucleoside transporter 1(ENT1)をノックアウトしたモデルマウスを用いて、母獣赤血球の酸素運搬能が低下した際に認める表現型を検証し、その分子学的背景も検討した。

【方法】施設内研究倫理委員会承認の下、上記モデルマウスの赤血球酸素運搬能が低下していることを確認すると同時に、妊娠における表現型が胎児発育不全であることを確認し、メタボロミクス解析を用いて、母獣からの胎盤へのアミノ酸取り込みが低下しているを同定した。胎盤局所でのHypoxia inducible factor 1-α(HIF-1α)の発現を免疫染色法で検討し、realtime RT-PCR及びウエスタンブロット法により、胎盤でのアミノ酸トランスポーターの発現を検討した。最後に絨毛細胞セルライン、HTR-8/SVneoをHIF-1α安定剤であるDimethyloxaloylglycine(DMOG)と共培養することで、HIF-1αとアミノ酸トランスポーター発現の関連についても検証した。

【成績】赤血球酸素運搬能が低下した遺伝子改変マウスでは、胎盤局所でのHIF-1αの発現の上昇を認め、胎盤でのLarge neutral amino acid transporter1(LAT1)の発現が低下していた。また、HTR-8/SVneo細胞培養においてHIF-1α発現下ではLAT1のmRNA低下を認めた。

【結論】母獣の赤血球酸素運搬能が低下することで胎盤局所でのHIF-1α発現が亢進し、胎盤でのLAT1の発現が低下することで母体循環中の血清からのアミノ酸の取り込みが低下し、胎児発育不全の表現型を呈し得ることが示唆された。

著者関連情報
© 2020 日本生殖免疫学会
前の記事
feedback
Top