抄録
本稿では社会科学的ジェロントロジーの定義の明確化と問題解決の指針・手段といった実践科学としてジェロントロジーが利用されるための可能性、そしてこれらと保険との関連についての考察を行っている。
前者について社会科学的ジェロントロジーは,「老いにより発生する問題に継続的に対処するための理論(研究)である」と定義付けをおこなった。また老いにより発生する様々な現象(出来事)の多くはリスクを伴うということと,これらに対して継続的な対処が必要とされることから,社会科学的ジェロントロジーはリスクマネジメントの手法を採用することがより適当であると考える。
後者のジェロントロジーと保険との関連については,今後の保険契約者への経済面と心身の健康の維持を促進するためのカウンセリング・サービスの実施や既存契約の保険金給付から現物給付への見直しだけではなく,民間主導の新たな高齢者向け保険の開発などの必要性がある。