日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 503
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沖縄県浦添市における保育サービスの供給と利用の地域的特徴
*若林 芳樹久木元 美琴由井 義通
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抄録

沖縄県は,大都市圏外にあって例外的に多くの保育所待機児童を抱えているが,その背景には,出生率,女性就業,米国統治などの面で,他県にはないローカルな事情がある.こうした沖縄県の保育の特徴を捉えるには,地域内での保育サービスの相互関係を検討する必要がある.本研究は,待機児童問題が深刻な浦添市を事例にして,保育サービスの供給と利用からみた地域的特徴を明らかにすることを目的とする.本研究で使用する,認可保育所と幼稚園での保育サービス供給に関する情報は,浦添市役所と同市のWebページなどから収集し,認可外保育所については市内の団体への聞き取り調査を行った.保育サービスの利用については,市内の保育所を利用する母親を対象にアンケート調査を実施し,認可保育所は1,163人から,認可外保育所は259人から,それぞれ回答を得た.さらにアンケート回答者の中から協力者を募り,合計6人に対してインタビュー調査を実施した.認可保育所は市内に26カ所あるものの,入所できない待機児童の受け皿となる認可外保育所は,それを上回る48カ所が存在する.約半数の認可外保育所で小学校の学童を受入れている点は,他県にない特徴といえる.市内の5歳児の55.7%が就園する幼稚園は,公立11園が小学校に併設されており,米国統治時代に由来する特徴を表している.いずれも2年保育と預かり保育を実施し,保育所の機能を補完している.このように,異なる制度のもとで設置された施設が相互に関連し合っているところに,沖縄県の保育サービスの特徴がみられる.保育サービスの利用については,主にアンケート調査結果をもとに分析した.出生率が高く複数の未就学児を抱える世帯が多い沖縄では,認可保育所と認可外保育所の両方を利用する世帯も少なくなく,兄弟姉妹で同じ認可保育所に入所できないことへの不満が多く聞かれた.子どもの送迎については,配偶者や親族から支援を受けている人が少なくないため,保育所を選択する際に親族の家に近いことも比較的重視されている.母親の就業状態は,保育施設の間で違いがみられ,認可外保育所を利用する母親の21%が仕事に就いていないが,その中には求職中や復職予定の人たちも含まれる.認可保育所の入所資格がない,こうした母親の子どもは潜在的待機児童とみなされるが,その受け皿となる認可外保育所への公的補助の拡充を求める意見も少なくない.

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