保険学雑誌
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衛星通信技術を利用した新たな自動車保険の経済分析
諏澤 吉彦
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2008 年 2008 巻 602 号 p. 602_31-602_49

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抄録
近年,衛星通信技術を利用して収集した被保険自動車の走行距離・場所・時間帯に関する情報に基づいて保険料が決定されるPAYD 自動車保険が導入されている。この保険は,契約当事者間の情報不均衡によって生じる保険契約者の逆選択およびモラルハザードの問題を縮小し,自動車保険の市場効率性を高める効果があると期待できる。いっぽうで,その運営にかかるコストはいまだ十分に低いとは言えず,このことが保険会社,保険契約者双方の負担をかえって重くするおそれがある。さらに深刻な問題として,保険会社間の競争圧力の存在が,コストを省みない過度のリスク細分化へとつながる可能性もある。PAYD 自動車保険をはじめとするリスク細分化に際しては,過大な運営コストにより市場効率性が損なわれることがないよう,公的規制の整備または保険会社間の調整など,なんらかの対策が必要であると考えられる。
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© 2008 日本保険学会
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