抄録
CSRへの関心が高まりCSR企業ランキングも盛んに公表されているが,金融機関はランキング除外となっており金融機関がCSR優良企業として注目される機会は少ない。金融商品を通じてのCSR影響度も,損害保険は,銀行・証券といった隣接業界に比べると現在は大きくはない。本稿では,損害保険会社のCSRについて,各社担当部署へのアンケートを通じて取組状況・自己評価を明らかにした上で今後のあり方を考察する。損害保険のCSR取組みは環境重視であり,CSR担当部署は,事業会社・銀行・証券との比較についてはあくまで損害保険に期待される役割に徹するとし,商品CSRの影響度は今後の取組み次第では銀行・証券に劣らない役割を果たせると意欲を見せている。損害保険商品CSRは,(1)商品提供自体の環境負荷を削減するもの,(2)気候変動関連の損害を適切に補償する商品の提供,(3)顧客企業のESG配慮行動を促進する保険商品の提供,に分類されるが,今後重要なのは(3)の取組みである。