抄録
消費者向けの保険教育については,これまで,損保協会が保険の仕組みや商品に関する各種情報提供,高校,大学への講師派遣,消費生活相談員向け勉強会などの取組みを行ってきた。また,最近,「消費者教育の推進に関する法律」が施行され文部科学省や金融庁でもその後押しの取組みがさまざまに行われている。しかし,保険の専門性や複雑性から,教える側と学ぶ側の意識や知識差の違いを克服するのはそう簡単ではない状況にある。そこで,そもそも消費者教育の主体・客体という構図をリセットし,消費者側と事業者側が一体になった関係のなかで,新たな消費者教育を構築していく必要がある。保険商品のシンプル化,わかりやすさを大前提にして,消費者とのコミュニケーション機会をさらに増やしながらお互いが学びあうという発想の転換が不可欠である。また,学校教育(特に大学の連続講座)の場は,リスク教育を含めて損害保険が持つ学究性と実利性の双方を学ぶ格好の機会である。