保険学雑誌
Online ISSN : 2185-5064
Print ISSN : 0387-2939
ISSN-L : 0387-2939
ARTICLES
保険価額について
-保険法における定義とその意義-
中出 哲
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 2014 巻 624 号 p. 624_183-624_202

詳細
抄録
これまでわが国では,濃淡はあれ,被保険利益を中核において損害保険の契約理論を体系化して,契約の有効性から損害てん補の各論まで説明していたが,両者を結びつけるうえでは,保険価額の概念が重要な機能を果たしていた。学説上,保険価額は「被保険利益の評価額」として理解され,それによって被保険利益は,量的概念に変換されて給付の量的規整まで支配する概念となった。一方,保険法は,保険価額について,伝統的定義を踏襲せずに「保険の目的物の価額」と定義した。この定義には批判もあるが,この定義の結果,契約の前提となる強行法的な利益に関する規律と一定の柔軟性があってよい給付様式の規律を切り離すことになったものといえる。この変更は,イギリス法,ドイツ法,ヨーロッパ保険契約法原則の体系とも整合的である。損害保険契約の理論体系から見た場合,保険価額の定義の変更は,保険法における最も革新的部分といえるのではないだろうか。
著者関連情報
© 2014 日本保険学会
前の記事 次の記事
feedback
Top