抄録
本稿では,急速な人口の高化によって退職年金の老後所得保障の役割が重要視されていることを念頭において,韓国の退職年金制度の運用現状とその特徴などを概観して退職年金制度運用上の主な問題を検討した後,退職年金の役割と機能を高めるための多様な対策を検討した。韓国の場合,退職給与制度の二元化などの制度的な問題によって退職年金制度への加入率は低く,また積立金の運用が元利金保証中心に行われていることから退職年金によって実現できる実質所得代替率は世界銀行が勧めている老後所得保障の水準(30%)に届かない13%にすぎない。その結果,退職年金制度の老後保障的な役割と経済的な役割は不十分であるのが現状である。本稿では,その対策として低所得の脆弱階層に対する退職年金のメリットの強化,退職年金の転換が誘導できる制度の改善,加入者保護に向けた退職年金政策の転換,退職年金積立金の運用規制の転換,実質的な支給保証制度の導入などをあげている。