保険学雑誌
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2014 巻, 625 号
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【査読済み論文】
  • 王 美, 久保 英也
    2014 年 2014 巻 625 号 p. 625_1-625_28
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
    2016年から欧州で導入予定の健全性指標「ソルベンシーII」は将来,日本でも導入される可能性がある。
    しかしながら,構造が複雑でアクチュアリアルな保険実務と直結していることもあり,当学会でも同基準への移行が保険業界全体に与える影響などについてはあまり議論されてこなかった。
    そこで,本稿では,日欧の2つの健全性基準を資産・負債両面に反映できる保険会社モデルを開発し,移行後の最大のリスクである金利リスクが両基準に与える影響を検証する。
    結果は,(1)低金利局面ではソルベンシーIIとソルベンシー・マージン基準の健全性水準は共にイールドカーブの変化に対し同方向に変化するが,平均金利局面,高金利局面では2つは逆方向に動く,(2)健全性が相対的に悪化する高金利局面では自己資本が重要となるが,自己資本の健全性水準に寄与する度合いは高金利局面では低下する,ことが判明した。
    現行のソルベンシー・マージン基準からソルベンシーIIに移行する際には,これらの指標特性を十分理解するとともに,資産負債のデュレーション格差の圧縮や予定利率の引き上げ抑制などリスク管理が重要である。同時に円滑な移行が実現するようソルベンシーIIの指標を日本に適合できるように見直すことも重要となる。
「医療保障制度と官民の役割分担」―平成25年度大会共通論題―
  • 恩藏 三穂
    2014 年 2014 巻 625 号 p. 625_29-625_31
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
  • 小坂 雅人
    2014 年 2014 巻 625 号 p. 625_33-625_50
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
    公的医療保障制度が存在する先進諸国における民間医療保険は「実損填補型」が主流である。その機能は,公的保障の補完機能,補足機能,二重機能,代替機能の4種類に大別でき,各国の公的医療保障制度の多様さに対応して,複数の機能を組み合わせた民間医療保険が提供されている。また,公的医療保障制度そのものにも,給付内容と保険料の選択制や,保険者機能の民間委託といった民間的要素を一定程度組み込むことで,運営の効率化や選択肢の拡大が図られている。我が国では「定額給付型」の民間医療保険が広く普及しているが,在院日数の短縮や先進的で高額な医療の登場によって,「定額給付型」ではカバーし切れない患者負担が生じ始めている。この様な環境変化と,諸外国における事例は,公的医療保障制度を基軸に置きつつ,制度に内在する課題を「実損填補型」民間医療保険が補うといった,今後の民間医療保険に求められる新たな役割を示唆していよう。
  • 石坂 元一
    2014 年 2014 巻 625 号 p. 625_51-625_69
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
    本稿は,医療保険市場を対象に,情報の非対称性から生じるモラル・ハザードと逆選択への対処策の有効性をモデルの上で示し,官民の役割分担の意義とその在り方を検討するものである。いずれの問題に対しても契約内容を工夫することで対処策が講じられ,その効果を定量的に算出することができるものの,両者を同時に解決できる最善策は存在しない。しかし,逆選択への対処策を官民の役割分担に応用することで,パレート改善を達成できる可能性が示される。ここから役割分担の意義と在り方への手掛かりを得ることができる。ただし,とりわけ医療サービスにおいては,資源配分の効率性だけではなく公平性もまた重視される。医療サービスに関して,官には公的保険以外の介入手段も含めて熟慮する必要があり,民間保険には一層多様な役割が期待される。
  • -保険者機能の視点から-
    石田 成則
    2014 年 2014 巻 625 号 p. 625_71-625_92
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
    本報告では医療保障における保険者の役割を,理論と実態面から考察し,わが国における保険者機能の強化と保険者の民間開放や業務委託の可能性について検討する。そのうえで,保険者の機能強化,そのマネジメント力強化のための条件を提示する。保険者のマネジメント力を考察するために,クロス・セクション・データ(都道府県別データ)を活用して,医療費や医療成果・アウトカムの地域格差を解明する方法を用いる。そして,マネジメント力を,1)地域医療計画に則った必要病床数の確保,無医地区の解消,2)保険料(税)収納率の向上そして,3)予防医療・保健活動を通じた健康管理と定義し,こうしたマネジメント力の向上と保険収支の安定化や(入院)医療費の関連性,およびこうしたマネジメント力に与える運営形態(の変革)の影響を実態に即して解明する。こうした実証分析結果を受けて,保険者のマネジメント力強化のために,専門人材の育成と財政的裏付けの必要性を強調した。
  • -がんをめぐる日本の状況と「公平性」の概念を題材に-
    宮地 朋果
    2014 年 2014 巻 625 号 p. 625_93-625_110
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
    各国が選択している医療保障制度や官民役割分担のあり方は,その国々の歴史,文化,国民性,国民の意識や価値観など,あらゆる要因の影響を受ける。したがって,単純に比較や模倣,導入をすることは困難であるし,誤った方向につながるおそれもある。民間保険においては,「公平性」や「平等」の概念をどのように考えるかによって,適正なリスク区分が変わってくる。また,「公平性」や「平等」の判断基準は,客観的な事実のみならず主観的な要因にも左右される。これと同様に,医療保障制度をめぐる官民役割分担を考察する際にも,国民が「公平性」や「平等」について,いかなる価値基準を持っているかが重要になる。国民の意識の変化により,適正な官民役割分担や,国民の負担のあり方も変わってくるからである。したがって,医療保障制度の設計や望ましい官民役割分担を考察するうえで,国民の意識が及ぼす影響について検討することは不可欠と言える。
  • 2014 年 2014 巻 625 号 p. 625_111-625_133
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
ARTICLES
  • -若年層の生保離れと資金繰り問題-
    福地 幸文
    2014 年 2014 巻 625 号 p. 625_135-625_154
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
    若年層の生保離れ等の実証に向け,2011年度までの約55年間を推定期間とする個人保険需要(かんぽ生命を除く)の時系列回帰分析をした。例えば,被説明変数の1つとした保有契約高増減率は,実質民間最終消費支出,消費者物価指数,雇用者数の各増減率および実質一般勘定利回り(率の階差)を説明変数とするモデル等が,高い説明力を示した。一方,同じく被説明変数である新契約件数増減率のモデルは,1995年度を境に変化し,20代を中心とした若年層の生保離れの一端を実証できた。この問題の解決には,小口の一時払終身保険を用いた資産・信用形成等,新たな提案が求められよう。
  • 申 文植, 李 鳳周, 柳 建植
    2014 年 2014 巻 625 号 p. 625_155-625_175
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
    本稿では,急速な人口の高化によって退職年金の老後所得保障の役割が重要視されていることを念頭において,韓国の退職年金制度の運用現状とその特徴などを概観して退職年金制度運用上の主な問題を検討した後,退職年金の役割と機能を高めるための多様な対策を検討した。韓国の場合,退職給与制度の二元化などの制度的な問題によって退職年金制度への加入率は低く,また積立金の運用が元利金保証中心に行われていることから退職年金によって実現できる実質所得代替率は世界銀行が勧めている老後所得保障の水準(30%)に届かない13%にすぎない。その結果,退職年金制度の老後保障的な役割と経済的な役割は不十分であるのが現状である。本稿では,その対策として低所得の脆弱階層に対する退職年金のメリットの強化,退職年金の転換が誘導できる制度の改善,加入者保護に向けた退職年金政策の転換,退職年金積立金の運用規制の転換,実質的な支給保証制度の導入などをあげている。
  • 崔 桓碩
    2014 年 2014 巻 625 号 p. 625_177-625_197
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
    韓国における生命保険産業は,伝統的に政府による護送船団方式の規制・監督が行われてきた。1980年代からは,米国からの市場開放の要求を受け,1987年から米国系保険会社の参入を認めている。その後,1996年のOECDへの加入,1997年のIMF金融危機を通じて,規制は大幅に緩和され,自由競争が促進された。その後,2012年には韓米FTAが発効した。韓米FTAでは,保険産業に関して保険市場のさらなる規制緩和措置とともに,隣接業界との規制・監督の一元化,すなわち保険産業と隣接業界との対等な競争条件を図ることを求めている。
    規制・監督の一元化は,生命保険市場の競争を促進する効果がある。一方で,隣接業界も生命保険会社の経営目標と同じように選別的保険引受と超過利潤分配を優先すると,すべての消費者の需要と期待を充足させない可能性がある。その解決策としては,生命保険市場の範囲内のみではなく,社会保障との連携性も考慮しながら新しい対策を進める必要がある。
  • Keiji Habara
    2014 年 2014 巻 625 号 p. 625_199-625_208
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
    This paper aims to elucidate the real aspect of the Great East Japan Earthquake occurred on M arch 11 in 2011 which is the most destructive natural disaster in Japan’s history by once in a thousand years tsunami. Through the analysis of damage by this earthquake and tsunami, how to enhance the global resiliency and international cooperation for the future effective disaster prevention systems can be clarified, recognizing Japanese past development of disaster countermeasures.
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