保険学雑誌
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〔法学系〕
生命保険会社の積極的な被保険者生存等の調査義務
-アメリカにおける死亡ファイルとの照合義務を中心に-
福田 弥夫
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2015 年 2015 巻 630 号 p. 630_291-630_311

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抄録

東日本大震災において,生命保険会社は各種の機関が公表した死亡者リストなどをもとにして,自ら積極的に被保険者の死亡を調査確認し,保険金請求等の勧奨を行ったが,これは大規模災害時における特別な対応であった。
アメリカ各州では,被保険者が死亡したにもかかわらず,一定期間保険金請求のない場合,未請求資産法(Unclaimed Property Law)によって,その保険金を州政府の管理下へと移管(州庫帰属,Escheat)する義務が生命保険会社に課されている。その義務との関係で,生命保険会社には社会保障庁の死亡マスターファイル(Death Master File)と被保険者とを照合する義務が課されているかが議論され,和解,裁判あるいは立法により,定期的な死亡ファイルとの照合義務が肯定される方向にある。
日本とは法的な背景等が異なるが,アメリカでの議論は興味深い論点を含んでいる。日本においても,一定の条件を満たす場合には,生命保険会社に被保険者の生存等について積極的な調査義務が発生すると考え,マイナンバーが利用可能となった際には,生命保険会社は定期的にデータと照合をし,保険金受取人に対して請求勧奨等を行う必要があると考えられる。

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© 2015 日本保険学会
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