保険学雑誌
Online ISSN : 2185-5064
Print ISSN : 0387-2939
ISSN-L : 0387-2939
ARTICLES
精神障害免責に関する一考察
勝野 義人
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 2016 巻 633 号 p. 633_105-633_125

詳細
抄録

災害関係特約における精神障害免責の適用につき,規定の趣旨から考察すれば,個々の被保険者において事故当時,危険に対する予知・回避能力があったか否かを基準として,客観的状況及び医的見解から個別具体的かつ制限的に解釈運用されるべきであり,その精神障害状態となった原因は問われないと考えられる。また,精神障害状態と災害(傷害)との間に因果関係が認められるためには,当該被保険者の「行為性」が必要となると考えられる。
精神障害免責と重過失免責との適用につき,両者は論理的に補完し合うものでないから,別個の免責事由として考察することが望ましい。
もっとも,免責規定の並びや,実務上の説明状況をみるとき,精神障害免責に対する消費者の違和感が存するのではないか,また,適用の際の納得感を担保できていないのではないかとの疑念もあり,高齢化する我が国における今後の実務の運用には,より慎重さが求められる。

著者関連情報
© 2016 日本保険学会
前の記事 次の記事
feedback
Top