保険学雑誌
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重大事由解除に基づく反社会的勢力排除の法理
藤本 和也
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2016 年 2016 巻 633 号 p. 633_85-633_104

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抄録

反社属性のみに基づく重大事由解除権行使の可否を検討するに際しては,重大事由解除の包括条項における「信頼関係破壊」要件の実質を明らかにする必要がある。そして近時,「信頼関係破壊」要件の実質に関する幾つかの見解が新たに示された。本稿では,「反社排除の社会的要請」,「社会規範の変化」,「対立抗争」,「公序良俗違反」,「個別の反社属性」,「保険契約者等の行為」,「反社属性に関する虚偽告知や表明確約違反」等と「信頼関係破壊」要件の関係を検討することにより,「信頼関係破壊」要件は,保険制度の健全性維持を可能とし同時に重大事由解除の濫用を防ぐべく,重大事由解除の機能をモラル・リスク排除に限定する役割を有している点を明確化しようと試みている。
保険契約における保険者の信頼は,「保険契約者等が将来において保険金の不正請求等の保険制度の健全性を害する行為(モラル・リスクを招来する行為)を行わないこと」に向けられている。故に,モラル・リスクと直接の関連性を有する事情は「信頼関係破壊」に影響を与えることになる。しかし,モラル・リスクと直接の関連性を有しない事情は「信頼関係破壊」に影響を与えない。

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© 2016 日本保険学会
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