抄録
保険料の安全割増の算定について,肝心なところは経験と勘に頼っている,金融の価格決定原理のような理論的な裏付けが十分には備わっていない,という批判がある。このような批判が妥当なものか否かを検証したところ,現下の安全割増の決め方には数学的な裏付けは備わっているものの,経済学的な裏付けが十分に備わっているとは言い難いことを確認した。等価を原理とする安全割増の価格決定に経済学的な裏付けとして効用原理を取り入れる意味や課題については議論を深める余地がある。また,金融の価格決定原理を用いた保険プライシングでは保険実務での使用に耐える安全割増算定は困難であることを確認した。算定が困難である根本原因は,金融の価格決定が支払余力・支払能力形成や破綻回避に重大な関心を払わないことにある。保険の価格決定はそれらに重大な関心を払うのであるが,支払余力・支払能力形成の目標や消滅時配当の方針に適合した安全割増を算定する原理や手法は確立しておらず研究開発はこれからといったところである。