2016 年 2016 巻 634 号 p. 634_87-634_110
わが国の権利保護保険制度は,紛争当事者となった被保険者が,その紛争解決のために必要となる訴訟費用や弁護士費用等の負担によるリスク(費用リスク)を負担する機能(費用リスク負担機能),および,弁護士会と協定保険会社等が協働で運営するシステムを通じて弁護士紹介を行う機能(法的サービス・アクセス機能)を有する点に大きな特徴がある。権利保護保険の費用リスク負担機能は,責任保険の防御給付機能を補完する役割はもとより,被保険者の権利保護の領域を一層拡充するものであり,この点において,権利保護保険の名称の由来ともなったドイツの権利保護保険から多くの示唆を得ることができる。一方,法的サービス・アクセス機能は,主に中小企業のリスク管理の観点から,紛争解決にかかる費用を軽減する費用リスク・コントロール手段となることが期待される。