保険学雑誌
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公的年金のフォワード・ルッキングなリスク管理
丸山 高行
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2017 年 2017 巻 636 号 p. 636_209-636_229

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抄録
GPIFおよび他の公的年金は,全体の約6割が国内債券という比較的安全性の高い基本ポートフォリオを,内外株式および外国債券を全体の65%とする,かなりリスクの高い形に変更した。すでにリスクの高い運用へと舵を切った以上,今後は,各公的年金ともにリスク管理の強化,特に「フォワード・ルッキングなリスク管理」を実現するための体制整備が急務である。ところが「フォワード・ルッキングなリスク管理」とはどのようなものかについては,学界でも実務界でも定まった見解があるわけではない。
そこで本稿は,公的年金にとって望ましいリスク管理の1つのアイデアとして,実行可能な「フォワード・ルッキングなリスク管理」手法を提案する。具体的には,多期間最適化モデルを応用した「シナリオ・シミュレーション型のリスク管理プロセス」を提示した上で,現実に近い数値を用いた公的年金のリスク管理シミュレーションを試みる。
シミュレーションの結果として,GPIFが想定する平均的な期待収益率が一定期間続くとするシナリオのもとでは,GPIFとほぼ同様の最適ポートフォリオが導かれる。ただし,特に内外株式の収益率の変動を大きくしたシナリオのもとでは,GPIFの想定とは異なる最適解が導かれ,フォワード・ルッキングなリスク管理の必要性が強く示唆される。
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© 2017 日本保険学会
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