保険学雑誌
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「保険法の国際比較」―平成28年度大会共通論題―
ドイツ保険契約法上のプロ・ラタ主義と告知義務違反
潘 阿憲
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2017 年 2017 巻 637 号 p. 637_53-637_81

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抄録
2008年に施行されたドイツ保険契約法では,それまで,保険契約者の契約上または法律上の責務違反等の場合に適用されていた全部免責の原則が廃止され,いわゆるプロ・ラタ主義が導入された。このうち,故意によらない告知義務違反の場合については引受基準減額原則が採用され,重過失,単純過失および無過失による告知義務違反で,かつ正しく告知されていたとすれば別の条件で保険契約が締結されたであろうときは,契約解除または解約は認められず,契約条件の遡及的変更のみができるものとされた。本稿は,プロ・ラタ主義としての契約調整制度について検討したものである。
具体的に,契約調整の要件としては,故意によらない告知義務違反のほか,保険者が告知されなかった事実を知ったとしても,別の条件で当該契約を締結していたであろうこと,保険者が保険契約者に対し文書方式の個別の通知により,告知義務違反の効果を指摘したことなどが必要である。また,契約調整の効果として,保険者の解除権および解約権が排除されて,契約内容の調整が行われ,危険担保の除外や制限,割増保険料の支払い等が認められる。さらに,主張立証責任に関しては,保険契約者は,原則として,保険者が告知されなかった事実を知ったとしても別の条件で契約を締結していたことについての主張立証責任を負うものの,その立証が困難であることから,保険契約者が契約調整の可能性について概括的に主張した場合には,その陳述責任は果たしたことになり,これに対し,保険者は,当該主張を争う責任を負い,その引受基準を開示しなければならないと解される。
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© 2017 日本保険学会
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