2018 年 2018 巻 642 号 p. 642_203-642_222
1990年代後半,金融機関を取り巻く経営環境が大きく変化した。保険会社の財務的健全性を維持することが,保険会社や監督者にとって至上命題となっており,市場規律の有効活用が求められている。海外の先行研究では保険会社に市場規律が認められることが実証されている。日本の保険会社に市場規律が認められるかどうかを確認することが大きな目的である。
信頼できる財務情報を開示することが効果的な市場規律の活用に不可欠で,情報開示によって企業の透明性を向上させることが可能になり,当該企業だけでなく市場規律の関係者全体の利益につながる。
本稿では保険会社における市場規律の概要,関係者,前提条件と問題点について考察し,銀行との比較,日本の保険会社における市場規律を測定するため分析対象となる変数(ソルベンシー・マージン比率,格付情報,株価,保険料,解約率など)の特徴について考察した。