IAISが国際資本規制の導入を進めているのと並行して,本邦金融庁も経済価値ベースの資本規制の検討を進めている。
新たなソルベンシー規制を巡っては様々な論点があるが,重要な論点の一つとして,必要資本の計算における「内部モデル」(internalmodel)の利用の可否とその条件がある。
経済価値ベースの資本規制の導入で先行している欧州ソルベンシーⅡにおいては,各国監督当局の承認を条件として,内部モデルを利用できる制度となっている。
欧州で大手保険グループの多くが内部モデルの承認を得てその利用を始めた一方,申請準備の過程で,申請業務の負荷の重さや,モデルにおいて選択した手法が許容されないことを理由に申請を断念した会社も多く,制度実施後,業務負荷や手法等への介入が過度であるという意見も表明されている。申請者と監督者との間で,重要性あるいは比例性の原則要因のひとつであったように見受けられる。
翻って,本邦における今後の検討を考えた場合,厳密に審査すべき重要な部分の特定や,重要性に見合う厳密さの程度等の判断基準について,価値観と理解を共有することが効率的な内部モデルの開発と審査にとって有効であり,早い段階から具体的なリスクプロファイルを前提として,このような共有を図ることが望まれる。
抄録全体を表示