保険学雑誌
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「われわれは近時のエマージング・リスクにどう向き合うべきか」—平成29年度大会 日本保険学会・日本リスク研究学会連携特別セッション—
医療技術進歩とエマージング・リスク
—がんの粒子線治療を例として—
重原 正明
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2018 年 2018 巻 642 号 p. 642_79-642_102

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抄録

人に関するエマージング・リスクの中から医療技術の進歩によるものとして,がんの粒子線治療を例として,リスクの実態と民間保険会社の商品化の現状について記す。がんの粒子線治療は効用が認められる治療法だが,治療費用が高額となる。現在は一部のがんを除いて,粒子線治療の部分は保険適用が認められない先進医療の扱いを受けている。保険会社は先進医療特約などでこの治療費用に対する準備手段を提供しており,引受に際し発生率に関するリスクの緩和のため商品設計上の考慮をしている。粒子線治療の例をもとに考えると,人に関するエマージング・リスクを民間保険で取扱う場合,データの収集,リスクの価値評価の不能性,患者(契約者)への情報の偏在などが課題である。データの収集には社会的サポートが有効であろう。リスクが確実に測定できなくてもある程度対応できる民間保険は,社会課題の解決の手段としても有効となり得る場合が多いと言えよう。

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