2019 年 2019 巻 644 号 p. 644_77-644_106
本稿は,P2P保険(peer to peerinsurance)の概要および主要類型を示したうえで,保険法および保険業法の P2P保険への適用可能性を検討するものである。P2P保険は,インシュアテック(InsurTech)を用いた保険(または,類似保険)の仕組みであるが,現在行われている P2P保険は,ブローカー型,キャリア型,相互救済制度型の3つに大別できる。本稿では,団体構成員間でリスクの分散負担を全面的に行う相互救済制度型の P2P保険(その典型例として,Teambrellaをとりあげた)に焦点を絞って,保険該当性の問題を検討した。
まず,経済的な保険に該当するか否かを検討すると,日本の主要学説の立場では Teambrellaは経済的な保険に該当せず,一方,筆者の立場では経済的な保険に該当することが判明した。
次に,筆者の立場では,Teambrellaは経済的な保険に該当するので,さらに保険法や保険業法の適用可能性を検討することになる。検討の結果, Teambrellaは保険法の「保険契約」に該当しないため,少なくとも保険法が適用されることはない(ただし,類推適用の可能性はある)。また, Teambrellaは保険業法における「保険業」に該当しないため(たとえ,拡大解釈をしても適用されないと考えられる),保険業法は適用されないと思われることが明らかとなった。
以上のとおり,少なくとも P2P保険のうちの相互救済制度型のもの(典型的には,Teambrella)に関しては,現行の保険法や保険業法が適用されず両法がうまく機能しない問題があることが(あるいは,適用されずにうまく機能しない可能性のあることが),明らかとなった。