2020 年 2020 巻 651 号 p. 651_171-651_191
本稿の目的は,1990年代以降中国における規制緩和により生命保険業がどのように変化したのかを考察することである。そこでまず,改革開放政策が打ち出された後,段階的に進められた規制緩和について考察し,次に規制緩和が生命保険市場に与えた影響を,集中率とハーフィンダール・ハーシュマン指数を用いて分析し,生命保険市場が競争的になりつつあることを明らかにした。さらに,規制緩和による生命保険会社のマーケティング活動の変化を次の2つの視点から考察した。①1990年代初めまでは生命保険会社の社員による直販一辺倒であったが,個人代理人,銀行窓販,直販など販売チャネルの多様化が進んだ。②生命保険会社では従来無配当の養老保険や年金保険中心の商品構成が多かったが,2000年以降は有配当保険,無配当保険,ユニバーサル保険,ユニットリンク保険,医療保険など商品の多様化が進み,また生命保険会社間に商品戦略の違いが生じた。