保険学雑誌
Online ISSN : 2185-5064
Print ISSN : 0387-2939
ISSN-L : 0387-2939
【一般論文】
無人自動運転のためのドイツ法改正
—民事責任および保険の観点からの検討—
金岡 京子
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 2021 巻 655 号 p. 655_55-655_76

詳細
抄録

本稿は,限定地域での無人自動運転移動サービスに対応したドイツの法改正(2021年7月27日公布)において,特に民事責任と保険に関係する規定に着目し,日本における今後の法整備の在り方について検討した。具体的には無人自動運転移動サービスを可能にするSAE自動運転レベル4の車両を公道で運行するために備えるべき自律運転装置の要件,保有者,遠隔監視者および製造者の義務,自律運転中に保存すべきデータの種類,保存方法,保存義務者,保存義務者から交通事故被害者へのデータの引渡し義務,上記データの利活用等について定めたドイツの法改正について,民事責任および保険の観点から検討した。その結果,無人自動運転移動サービスにおいては,車両を遠隔監視し,必要な場合は車両に運転操作を指示し,また緊急時に車両内の人を救護するための義務等を負う遠隔動作指令者の民事責任に対応する保険の制度設計が必要であることが明らかになった。ドイツのように自動車保険で交通事故被害者保護を図ったうえで,真の加害者に求償する制度設計は,レベル3までの自動運転だけでなく,レベル4の自律運転においても妥当であるならば,今後の日本における無人自動運転に対応した保険制度設計において参照可能であると考えられる。

著者関連情報
© 2021 日本保険学会
前の記事 次の記事
feedback
Top