2022 年 2022 巻 656 号 p. 656_167-656_186
本稿は,日本法およびドイツ法におけるD&O保険契約に関する動向をふまえ,D&O保険契約のあり方等について考察することを目的とするものである。令和元年改正会社法は,D&O保険契約の適切な活用のため,手続規律および開示規律を明確にした点で意義がある。当該規律の適用対象であるD&O保険とは,保険契約者が株式会社であり被保険者を役員とする保険契約であって,①利益相反性が高く,②役員等の職務の執行の適正性に影響を与えるおそれがある契約であるととらえられていることを指摘できる。ドイツでは,近時,D&O保険のアシスタントサービスについて,サービスプロバイダーの態様と保険会社の責任に関する議論がなされている。ドイツにおける議論は,日本のD&O保険において企業リスクの多様化への対応を図る中で展開される可能性のある議論であり,アシスタントサービスのあり方,保険会社の責任等について,参考となる。