2022 年 2022 巻 658 号 p. 658_41-658_67
金融リテラシーをめぐる現状には二つの重要な論点が所在する。第一は,設問に対する『正答(率)』にて達成度を測ることに研究の重点が当てられている,という現状への問題意識から出発するものである。第二は,若者たちが金融リテラシーを身に付けることで自分自身に何がもたらされ,社会全体にとっても何がもたらされるのか,という点が主題として議論されていないという問題意識から出発するものである。本論文は,若者たちが金融リテラシーを身に付ける意義および金融リテラシーの捉え方に関する問題提起を研究の目的とする。本論文の研究の成果は,「わからない」との回答に焦点を当てた考察は合理的であり,達成度だけで評価するのではなく社会的課題と結び付けた捉え方が重要であるとの解釈を導き出したことである。今後の展望として,金融リテラシーを身に付けることが若者たちの生きる力につながり,社会全体のWell-beingにもつながるという方向での金融リテラシー研究が展開され,その結果,自らのWell-beingと社会全体の課題を結び付けて捉える若者たちが増加することは,社会経済の一層の発展にも資するとの取りまとめを行った。