本稿の第一の目的は、『インターンシップ研究年報』第24号における特集企画の枠組みを提示することである。インターンシップの制度的導入から20年あまりのインターンシップにかかる多様な「共通感覚」の形成・ゆらぎの過程を辿り、より包括的な「職業統合的学習(WIL)」概念のもとで研究を進めていくことの可能性を検討する。次に、そうした外延的に拡がる研究範囲に対してどのように内包的定義を注視し、社会科学としての研究を行うのか。研究の目的性、対象範囲の内包と外延、研究の当事者的視座について検討を行う。インターンシップとWIL の当事者的視座として、日本インターンシップ学会会則等からも、「学習者の学びと成長」「教育のプログラムと制度」「企業等の採用・人材育成」の三者にかかる研究領域設定を行うことができる。また、インターンシップにかかる統計的把握の混乱についても、こうした当事者的視座を踏まえることで総合的に理解していくことができる。第三に、これまでインターンシップ・WIL をめぐって、どのような「問い」と「方法」が組み合わされて研究活動が展開されてきたのか、科研費データベースを用いてその傾向のテキスト分析を行う。研究として確立された領域、今後に期待される領域などが明らかになり、特にインターンシップ・WIL に関わる当事者の経験と能力に関する自己省察や能力開発を扱う研究が大きな未開拓領域として残されていることも明らかになった。