2020 年 39 巻 4 号 p. 410-418
目的 : 関節鏡視下手術後骨壊死 (PAONK) は, 3型に分類される膝の骨壊死の稀な1型である。報告が少ないため, その原因および実態は十分に明らかではない。本研究の目的は, 当院において発生した10例のPAONKの鏡視下手術前後の病態を明らかにすることである。
方法 : 2010〜2015年に当院で膝関節鏡視下手術を行った1,485膝の中の10膝 (0.67%) にPAONKが発生した。この10膝について関節鏡視下手術前後の臨床的および放射線医学的病態をretrospectiveに調査した。
結果 : 10膝のすべてで, 内側半月 (MM) 後節の変性損傷 (後根5, 水平2, 放射状3) に対する鏡視下部分切除が行われていた。手術時年齢は57〜80歳 (平均67.5歳) であった。術後3か月以内に7例に, 術後4〜7か月の期間に3例に強い疼痛が出現し, MRIによって骨壊死と診断された。術前から全例に半月逸脱を認め (平均4.7mm), 診断時には有意に増加 (平均5.9mm) していた (P=0.0031)。
考察 : 本研究は, PAONKの病因として半月板の逸脱が関与している可能性を示唆した。関節鏡手術を行う術者はPAONKに関する正しい知識をもって術前のICを行うべきであり, 特に逸脱を伴うMM損傷の切除手術後は細心の経過観察が必要である。