2020 年 39 巻 4 号 p. 402-409
目的 : 両側同時人工膝関節全置換術は入院期間の短縮などのメリットがあるが, 予定通りにリハビリテーションが進まず, 予定されたクリニカルパスの入院期間内に退院できない症例も散見する。過去に入院期間に影響を与える術前因子の報告はなく, 今回検討を行った。
方法 : 両側同時人工膝関節全置換術を施行した変形性膝関節症患者191例を対象とした。術前に調査した年齢, 性別, BMI, ASA class, Knee Society Score (KSS) functional score, Hb値, Alb値, 膝可動域, 膝立位X線像でのK-L grade, 独居かどうかを独立因子として調査した。術後3週間以内に自宅退院した群 (遵守群), 以後に自宅退院または転院した群 (後期群) の2群に分けた。早期退院に影響を与える因子を調査し, 予測するスコアリングシステムを構築した。
結果 : 132例は遵守群, 59例は後期群であった。退院に影響する因子は多変量解析の結果, 年齢 (β=−0.086976; P<0.01), Hb値 (β=0.34; P<0.05) であった。スコアリングシステムとして, スコア=10−0.09×年齢−0.09×BMI−0.56×独居 (独居 : 1, 他 ; 0) +0.03×KSS stairs+0.34×Hb値−1.1×ASA classが算出された。C統計量は0.748 (95% confidence interval[CI], 0.672〜0.824), 感度66.6%, 特異度78.0%であった。
結論 : 術前因子を使用することである程度予定した入院期間内に自宅退院が可能であるかを術前に予測することが可能である。