日本関節病学会誌
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人工股関節全置換術術後のPelvic obliquityは術前の腰椎側屈可動性と関連している
小澤 悠人大澤 郁介竹上 靖彦船橋 洋人
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2023 年 42 巻 1 号 p. 12-21

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抄録

目的:側方骨盤傾斜は変形性膝関節症や変形性腰椎症などの隣接椎間障害や自覚的な脚長差を生じることからQOLを障害する因子の一つとして知られている。変形性股関節症では脚長差や可動域制限により側方骨盤傾斜を呈することが少なくなく,ときとして人工股関節置換術(以下THA)後でも側方骨盤傾斜の改善が得られない症例が存在する。本研究の目的はTHA後の側方骨盤傾斜を認めない症例と残存する症例を比較し,術後側方骨盤傾斜に影響を与える因子について調査することである。

症例および方法:単一施設後ろ向きコホート研究にて,2018年6月から2020年7月までに片側THAを行った91股を対象とした。これらの症例をTHA後の側方骨盤傾斜が2°以内であった48例(以下F群)と2°以上であった43例(以下O群)に分けた。調査項目は年齢,性別,身長,体重,Body Mass Index,術前後のHarris hip score(以下HHS),術前後の股関節可動域,術前後の自覚的脚長差の有無,術前後の側方骨盤傾斜,脚長差,オフセット,術前腰椎側屈可動性について両群間で比較検討を行い,多変量解析を用いて術後の側方骨盤傾斜に影響する因子を評価した。

結果:年齢,性別,身長,体重,BMIは両群で有意差を認めなかった。術前のHHSは両群で有意差を認めなかったが,術後1年でのHHSはF群90.8±7.6に対してO群86.4±11.0で有意にO群が不良であった。術前自覚的脚長差には両群で有意差を認めなかったが術後の自覚的脚長差認識率はF群で20.8%,O群で51.1%と有意にO群で自覚的脚長差を有する症例が多かった。術前後の画像的な脚長差は両群で有意差を認めなかった。術前の腰椎側屈可動性はF群で8.7±4.3°,O群で6.9±4.9°で有意にO群が不良であった。多変量解析の結果では術前側方骨盤傾斜と術前の腰椎側屈可動性が術後の側方骨盤傾斜≧2°の有意なリスク因子であった。

結論:術前の側方骨盤傾斜が大きい症例や腰椎可動性が不良な症例ではTHA後の側方骨盤傾斜が残存するリスクが高く,慎重な術前計画が必要である。

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