日本関節病学会誌
Online ISSN : 1884-9067
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42 巻, 1 号
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原著
  • 月村 泰規, 金子 博徳, 岩間 友, 丸岩 侑史, 吉澤 泰, 増渕 茉侑, 倉坪 亮太, 網中 陽子
    2023 年 42 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    目的:当院で施行した自家培養軟骨移植:JACC®の術後1年における画像評価(ICRS scoreおよびMOCART score)と臨床成績(KOOS)の関連を検討する。

    方法:2016年4月から2020年7月の間に当院でJACC®を施行し,術後1年データを渉猟した50例50膝を対象とした。平均年齢46.0±13.7歳,性別は男23膝,女37膝,左18膝,右32膝,平均移植面積644.5±343.6mm2であった。移植部位は,単独部位が40膝,2か所移植が10膝であった。

    結果:ICRS scoreとKOOSの相関は,術後6か月,12か月のsymptom,Pain,ADLと,術後12か月のみSportsが有意な正の相関を認めた。MOCART scoreは,術後6か月でFilling of defect(FD),Integration to border zone(IB)がKOOS各項目と有意な正の相関を認め,術後12か月でFD,IBはQOL以外,Surface of the repair tissueではKOOSのpain,symptomが有意な正の相関を認めた。

    考察:ICRS score,MOCART scoreとも移植軟骨の表面所見は現行の臨床症状を表現できているが,MOCART scoreの移植軟骨内部の品質,構造評価は現行の症状とは相関せず,Sportsではジャンプや膝を捻るなど筋力や体力,QOLは生活様式の変更など心理的要因などの影響も関与すると考えられ,関連づけに困難があると思われる。

  • 小澤 悠人, 大澤 郁介, 竹上 靖彦, 船橋 洋人
    2023 年 42 巻 1 号 p. 12-21
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    目的:側方骨盤傾斜は変形性膝関節症や変形性腰椎症などの隣接椎間障害や自覚的な脚長差を生じることからQOLを障害する因子の一つとして知られている。変形性股関節症では脚長差や可動域制限により側方骨盤傾斜を呈することが少なくなく,ときとして人工股関節置換術(以下THA)後でも側方骨盤傾斜の改善が得られない症例が存在する。本研究の目的はTHA後の側方骨盤傾斜を認めない症例と残存する症例を比較し,術後側方骨盤傾斜に影響を与える因子について調査することである。

    症例および方法:単一施設後ろ向きコホート研究にて,2018年6月から2020年7月までに片側THAを行った91股を対象とした。これらの症例をTHA後の側方骨盤傾斜が2°以内であった48例(以下F群)と2°以上であった43例(以下O群)に分けた。調査項目は年齢,性別,身長,体重,Body Mass Index,術前後のHarris hip score(以下HHS),術前後の股関節可動域,術前後の自覚的脚長差の有無,術前後の側方骨盤傾斜,脚長差,オフセット,術前腰椎側屈可動性について両群間で比較検討を行い,多変量解析を用いて術後の側方骨盤傾斜に影響する因子を評価した。

    結果:年齢,性別,身長,体重,BMIは両群で有意差を認めなかった。術前のHHSは両群で有意差を認めなかったが,術後1年でのHHSはF群90.8±7.6に対してO群86.4±11.0で有意にO群が不良であった。術前自覚的脚長差には両群で有意差を認めなかったが術後の自覚的脚長差認識率はF群で20.8%,O群で51.1%と有意にO群で自覚的脚長差を有する症例が多かった。術前後の画像的な脚長差は両群で有意差を認めなかった。術前の腰椎側屈可動性はF群で8.7±4.3°,O群で6.9±4.9°で有意にO群が不良であった。多変量解析の結果では術前側方骨盤傾斜と術前の腰椎側屈可動性が術後の側方骨盤傾斜≧2°の有意なリスク因子であった。

    結論:術前の側方骨盤傾斜が大きい症例や腰椎可動性が不良な症例ではTHA後の側方骨盤傾斜が残存するリスクが高く,慎重な術前計画が必要である。

  • 安間 三四郎, 宇佐美 琢也, 白神 宗男, 上用 祐士, 南谷 千帆, 服部 雄介, 加藤 桜子, 近藤 凌平, 渡邊 創一朗, 永谷 祐 ...
    2023 年 42 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    背景:人工膝関節全置換術(TKA)術後の膝前部痛は膝蓋大腿関節(PF)圧の上昇が主な原因とされているが,コンポーネントの設置位置がPF圧に及ぼす影響に関する詳細な報告はない。

    目的:TKAコンポーネントの設置位置がPF圧に与える影響を定量的に評価することである。

    方法:変形性膝関節症に対してTKAを施行した40膝(男性11膝,女性29膝)を対象とした。骨切りした膝蓋骨に圧力センサーを内蔵した膝蓋骨コンポーネントを設置し,TKA前,後において膝関節屈曲0°,90°,120°,135°の内側と外側それぞれのPF圧を計測した。さらに,TKA後のpatellar trackingが良好群(A群)と不良群(B群)の二群間のPF圧を比較し,PF圧に影響を与えるコンポーネントの設置位置を術後単純X線像を用いて検討した。統計にはMann-Whitney U検定,Wilcoxon符号付順位和検定,Spearmanの順位相関係数を用い,P<0.05を有意差ありとした。

    結果:TKA後は屈曲120°,135°における外側PF圧が上昇した。B群はA群に比してTKA後の屈曲90°から135°における外側PF圧が高く内側PF圧が低かった。術後単純X線膝関節軸位像において,膝蓋骨長軸に対する膝蓋骨骨切り面がなす角(PRA,外旋:+,内旋:-)は屈曲120°,135°における外側PF圧と負の相関を示した。

    考察:PRAの低値は膝前部痛や無痛性轢音の危険因子と報告されている。本研究において,膝蓋骨の内旋骨切りによる外側PF圧の上昇がTKA術後のpatellar tracking不良に繋がる可能性が示唆された。

  • 菅原 悠太郎, 清水 智弘, 横田 隼一, 石津 帆高, 宮崎 拓自, 小川 拓也, 髙橋 大介, 岩崎 倫政
    2023 年 42 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    目的:特発性大腿骨頭壊死症患者(ONFH)が股関節以外に骨壊死を引き起こす多発骨壊死は,3関節以上と定義した際には約3%とこれまで報告されてきた。一方で,無症候性壊死を検出感度の高い全身MRIを用いた先行研究では,ONFH患者の約25%に多発骨壊死が発生し全例ステロイド関連ONFHであった。そこで本研究は,ステロイド関連ONFH症例を対象として,多発骨壊死の関連性を調査することを目的とした。

    方法:対象は当院における定点モニタリング対象となったONFH症例328名のうち,特発性ONFH 9名,アルコール関連ONFH 75名およびデータ詳細不明の16名を除外したステロイド関連ONFH 228名(男性108名,女性120名)である。基礎疾患,ステロイド投与最大量,ステロイドパルス療法,アルコール,喫煙,股関節以外の関節の骨壊死発生を調査した。

    結果:多発骨壊死は228名中59名(男性24名,女性35名)に生じていた。多発骨壊死症を生じたONFH症例は,若年,両側ONFH症例,ステロイド高用量,ステロイドパルス症例,喫煙,全身性エリテマトーデス症例の傾向があった。多変量解析を行ったところ,ステロイドパルス(オッズ比3.0倍,P=0.008)が多発骨壊死の独立した関連因子であった。

    考察・結論:ONFH発生に関してステロイド投与量やステロイドパルスが関連することと同様に,多発骨壊死とステロイドパルスは関連したことから多発骨壊死発生もステロイド感受性が関連することが示唆された。多発性骨壊死発生のメカニズムはわかっていないが,ステロイド関連ONFHが発生した際には,多発骨壊死のスクリーニングを行うことを考慮する必要があると考えられた。

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