背景:人工膝関節全置換術(TKA)術後の膝前部痛は膝蓋大腿関節(PF)圧の上昇が主な原因とされているが,コンポーネントの設置位置がPF圧に及ぼす影響に関する詳細な報告はない。
目的:TKAコンポーネントの設置位置がPF圧に与える影響を定量的に評価することである。
方法:変形性膝関節症に対してTKAを施行した40膝(男性11膝,女性29膝)を対象とした。骨切りした膝蓋骨に圧力センサーを内蔵した膝蓋骨コンポーネントを設置し,TKA前,後において膝関節屈曲0°,90°,120°,135°の内側と外側それぞれのPF圧を計測した。さらに,TKA後のpatellar trackingが良好群(A群)と不良群(B群)の二群間のPF圧を比較し,PF圧に影響を与えるコンポーネントの設置位置を術後単純X線像を用いて検討した。統計にはMann-Whitney U検定,Wilcoxon符号付順位和検定,Spearmanの順位相関係数を用い,P<0.05を有意差ありとした。
結果:TKA後は屈曲120°,135°における外側PF圧が上昇した。B群はA群に比してTKA後の屈曲90°から135°における外側PF圧が高く内側PF圧が低かった。術後単純X線膝関節軸位像において,膝蓋骨長軸に対する膝蓋骨骨切り面がなす角(PRA,外旋:+,内旋:-)は屈曲120°,135°における外側PF圧と負の相関を示した。
考察:PRAの低値は膝前部痛や無痛性轢音の危険因子と報告されている。本研究において,膝蓋骨の内旋骨切りによる外側PF圧の上昇がTKA術後のpatellar tracking不良に繋がる可能性が示唆された。
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