日本関節病学会誌
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原著
ステロイド関連特発性大腿骨頭壊死症における多発骨壊死の関連因子
菅原 悠太郎清水 智弘横田 隼一石津 帆高宮崎 拓自小川 拓也髙橋 大介岩崎 倫政
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2023 年 42 巻 1 号 p. 30-33

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抄録

目的:特発性大腿骨頭壊死症患者(ONFH)が股関節以外に骨壊死を引き起こす多発骨壊死は,3関節以上と定義した際には約3%とこれまで報告されてきた。一方で,無症候性壊死を検出感度の高い全身MRIを用いた先行研究では,ONFH患者の約25%に多発骨壊死が発生し全例ステロイド関連ONFHであった。そこで本研究は,ステロイド関連ONFH症例を対象として,多発骨壊死の関連性を調査することを目的とした。

方法:対象は当院における定点モニタリング対象となったONFH症例328名のうち,特発性ONFH 9名,アルコール関連ONFH 75名およびデータ詳細不明の16名を除外したステロイド関連ONFH 228名(男性108名,女性120名)である。基礎疾患,ステロイド投与最大量,ステロイドパルス療法,アルコール,喫煙,股関節以外の関節の骨壊死発生を調査した。

結果:多発骨壊死は228名中59名(男性24名,女性35名)に生じていた。多発骨壊死症を生じたONFH症例は,若年,両側ONFH症例,ステロイド高用量,ステロイドパルス症例,喫煙,全身性エリテマトーデス症例の傾向があった。多変量解析を行ったところ,ステロイドパルス(オッズ比3.0倍,P=0.008)が多発骨壊死の独立した関連因子であった。

考察・結論:ONFH発生に関してステロイド投与量やステロイドパルスが関連することと同様に,多発骨壊死とステロイドパルスは関連したことから多発骨壊死発生もステロイド感受性が関連することが示唆された。多発性骨壊死発生のメカニズムはわかっていないが,ステロイド関連ONFHが発生した際には,多発骨壊死のスクリーニングを行うことを考慮する必要があると考えられた。

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