日本関節病学会誌
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原著
ステロイド含有関節周囲多剤カクテル注射のTKA術後DVT予防効果に関する検討
―硬膜外麻酔との比較―
園部 正人中島 新赤津 頼一齊藤 淳哉山田 学小山 慶太山本 景一郎岩井 達則吉田 有希中谷 修平中川 晃一
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2023 年 42 巻 4 号 p. 327-333

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抄録

目的:ステロイド含有の関節周囲多剤カクテル注射(以下,カクテル注射)は,TKA術後の疼痛対策として有用であることが知られている。さらに,カクテル注射は鎮痛効果だけでなく,DVT予防効果も有するとの報告があるが,DVT予防効果に関して十分なエビデンスは得られていない。今回,カクテル注射のDVT予防効果の有無に関して検討した。

方法:当科で全身麻酔下に初回片側TKAを施行したOA患者のうち,2020年2月以降にカクテル注射を併用した47膝(カクテル群)と,それ以前に硬膜外麻酔を併用した236膝(Epi群)を対象とした。傾向スコアマッチング法を用いて年齢,性別,BMI,手術時間,術後抗凝固薬使用の有無,静脈血栓塞栓症の既往,悪性腫瘍・高血圧・糖尿病の有無を調整し,各群45膝を抽出し2群間比較した。主要評価項目は術後の新規DVT発生率とし,副次評価項目は術前,術後1,3,7,14日目におけるD-dimer値とCRP値,術後3日目までにレスキューとして使用したジクロフェナク®坐薬の使用回数とした。DVTの検索は,術前と術後2日,14日目に下肢静脈エコーを用いて全例行った。抗凝固療法は,術後3日目からリクシアナ®を7日間継続した。

結果:術後の新規DVT発生率は,カクテル群が11.1%,Epi群が15.6%であり,2群間で有意差を認めなかった(95%CI: −18.5%,9.5%,P=0.76)。一方,D-dimer値は術後7,14日目でカクテル群が有意に低値であり,CRP値は術後3,7日目でカクテル群が有意に低値であった。ジクロフェナク®坐薬の使用回数は2群間で有意差を認めなかった。

考察:術後のDVT発生率はカクテル群が11.1%,硬膜外麻酔群が15.6%であり,有意差を認めなかった(95%CI: −18.5%,9.5%,P=0.76)。硬膜外麻酔と比べ,カクテル注射にDVT予防効果があるとは言えない。

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