目的:本研究では,前十字靱帯再建術(anterior cruciate ligament reconstruction: ACLR)後に発症する膝蓋大腿関節症(patellofemoral osteoarthritis: PFOA)臨床的および画像学的危険因子を明らかにすることを目的とした。
方法:2015年2月から2023年8月までにACLRを施行し,術後1年以上の経過観察および再鏡視が可能であった86例を対象とした。PFOAの有無による群分けの上,手術時年齢,膝蓋骨高位(Insall-Salvati比),膝伸展筋力,Lysholmスコアなどの臨床・画像学的指標について後方視的に二群間比較を行い,さらに単変量および多変量ロジスティック回帰分析によって独立した危険因子を検討した。
結果:二群間比較の結果,PFOA発症例では手術時年齢が高く,膝伸展筋力,Lysholmスコアが低く,術後の膝蓋骨低位化がより顕著であった。単変量解析でも年齢,膝蓋骨低位化,術後膝伸展筋力,術後LysholmスコアがPFOA発症と有意に関連したが,多変量解析の結果,手術時年齢および膝蓋骨低位化が独立したリスク因子として抽出された。
考察:本研究により,ACLR後のPFOA発症には年齢や膝蓋骨低位化など複数の因子が関与していることが明らかとなった。今後はこれらのリスクを的確に評価し,膝蓋骨低位化の予防・是正を目指した術後管理や,筋機能回復を含めた柔軟な治療戦略を組み合わせることで,PFOAの発症抑制および膝関節機能の長期温存が期待される。