日本乳酸菌学会誌
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総説
母乳によるビフィズス菌増殖の分子機構
北岡 本光
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2011 年 22 巻 1 号 p. 15-25

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抄録

乳児腸管へのビフィズス菌定着は健康上重要である。20 世紀初頭には、人工乳栄養乳児にビフィズス菌の定着が起きないため下痢・感染症の頻発のような健康問題が生じていた。母乳に含まれるビフィズス因子に関する研究が継続的に行われてきた結果、1950 年代には、母乳中に含まれるラクトース(Lac)以外のオリゴ糖(ヒトミルクオリゴ糖・HMOs)がビフィズス因子として作用していることが示された。現在では人工乳に種々のプレバイオティクスオリゴ糖が添加されており、人工乳栄養乳児腸管にもビフィズス菌が定着する。しかしながら、母乳栄養乳児と人工乳栄養乳児のビフィズス菌の定着速度には未だに差が見られるため、HMOsは他のプレバイオティクスオリゴ糖とは異なる機能を持つと考えられる。HMOs は130 種以上の分子種を含む複雑な混合物であるため、ビフィズス菌増殖の分子機構は最近まで明らかにされていなかった。演者らはビフィズス菌がHMOs に多く含まれる二糖構造であるラクト-N-ビオースI (Galβ1,3GlcNAc, LNB) に特異的な代謝経路を持つことを見いだしたことをきっかけに、ビフィズス菌のHMOs 代謝に関わる酵素群を同定した。本総説ではビフィズス菌のHMOs 代謝経路および代謝の鍵オリゴ糖であるLNB の製造技術について筆者らの研究を中心に紹介する。

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© 2011 日本乳酸菌学会
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