日本乳酸菌学会誌
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ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの発現強化によるLactobacillus plantarum のピルビン酸生成反応の迂回経路の構築
辻  聡梶川 揚申岡田 早苗佐藤 英一*
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2013 年 24 巻 2 号 p. 88-92

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抄録

発酵生産系において、代謝経路の律速段階が全体の反応速度を決定してしまうことがしばしば問題として挙げられる。その中で、Lactobacillus plantarum の乳酸生成において、解糖系の律速段階であるピルビン酸の生成速度が問題となることが以前から指摘されていた。そこで、L. plantarum NCIMB 8826 株においてホスホエノールピルビン酸からピルビン酸生成反応の迂回経路の構築を試みた。L. plantarum NCIMB 8826 株では、TCA 回路の中間体であるリンゴ酸をリンゴ酸酵素(以下、ME)によりピルビン酸に変換することが可能である。そこで、本研究ではホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(以下、PEPCK)の発現強化により還元的TCA 回路への代謝流量の向上を試みた。また、本迂回経路へのME の影響はME 欠損株を用いて評価した。PEPCK 高発現株では、培養24 時間後の代謝産物の分析により、親株よりもコハク酸生成量が増加したことから、還元的TCA 回路への代謝流量の増加を確認した。また、ME 欠損PEPCK 高発現株がPEPCK 高発現株よりもコハク酸生成量が高かったことから、PEPCK 高発現株では、リンゴ酸がピルビン酸へ変換されることが示唆された。PEPCK 高発現株は親株よりも生育が向上した。L. plantarum NCIMB8826 株においてPEPCK の発現強化は、効率的な発酵生産につながる有効な手段になると期待される。

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© 2013 日本乳酸菌学会
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