抄録
1993 年12 月29 日に発効した生物多様性条約の下に遺伝資源に対する加盟国の主権的権利が認められ、遺伝資源へのアクセスと利益配分(Access and Benefit-sharing;ABS)の基本原則である、①遺伝資源の提供国から「事前の情報に基づく同意(Prior Informed Consent:PIC)」を得ること、②遺伝資源の利用から生じる利益は「相互に合意する条件(Mutually Agreed Terms;MAT)」で分配することが規定された。さらに、2014 年10 月12 日には、ABS に関する名古屋議定書が発効した。この名古屋議定書は、ABS を確保するために、遺伝資源提供国と遺伝資源利用国の双方に義務を課した国際的な取り決めである。本稿では、ABS の基本及び留意点を紹介するとともに、名古屋議定書の特徴、名古屋議定書を巡る国内外の動向、名古屋議定書の課題を概観し、今後の展望について述べたい。