日本乳酸菌学会誌
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総説
遺伝子組換え食品の安全性に関する研究から生まれた乳酸菌経口粘膜ワクチンの開発
五十君 靜信
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2021 年 32 巻 1 号 p. 7-14

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抄録

遺伝子組換え食品の安全性に関する研究は、1989 年から民間の乳業企業の研究者と研究班を組織し開始した。この研究班は、学術的には日本乳酸菌学会の設立に、行政的には遺伝子組換え食品の安全性に関する国際標準のガイドライン策定に貢献した。この研究班では安全性評価のモデルとなる乳酸菌組換え体が必要であったが、この研究はのちの乳酸菌組換えワクチン開発研究へと展開した。

これまでのワクチン研究から、ワクチンは病原体の感染経路から免疫するのが最も効果的であることが分かっている。したがって、粘膜感染型の病原体には粘膜局所と全身性免疫を惹起できる経口によるワクチン投与は最上の方法である。特に、乳酸菌を抗原運搬体として用いることは安全性と菌体の持つ免疫調節作用から有望である。そこで我々は様々な感染防御抗原を組み込んだ乳酸菌組換え経口粘膜ワクチンを開発した。その中でも死菌体で効果が期待できる経口ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは素晴らしい成果をあげた。マウスやヒトの実験で HPV の E7 抗原に特異的な細胞傷害性T 細胞(CTL)を誘導し高い治療効果が得られたのである。現在、製剤化に向けてヒトにおける臨床治験が行われている。

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