抄録
四国地方における集水域の土地利用の程度が異なったダム湖における生元素濃度を測定し、富栄養化の現状を明らかにした。すべてのダムは亜熱帯湖で春_から_秋にかけて強い水温躍層が形成されており、安定した水塊構造となっていた。降水の多い山岳部のダムでは窒素、リン量が少なく、中深層においても溶存酸素が豊富であった。一方、降水量の少ない平野部のダムではダム湖上流に人家がなくても窒素濃度が高く、ダム湖内では有機態窒素の濃度がTNの半分を占め、水温躍層以深で溶存酸素が枯渇した。このように降雨の少ない平野部のダムにおいてはダム湖上流において人的影響がなくても富栄養化している。これは流入水中の生元素濃度が相対的に高くなるためと解釈出来き、集水域における降雨量がダム湖の富栄養化を考える上で重要であると考えられる。